【2025年を読む】2026年の経済成長率は約6%!独仏の経済減速が深刻なEUで浮上するウクライナ復興需要の皮算用
ロシアとの長引く戦争によって厳しい状況が続いているウクライナ経済。その中で、独仏経済の減速が深刻な欧州連合(EU)では、ウクライナの復興需要に大きな期待が高まっている。供給力の落ちたウクライナでは、どのように復興を進めるべきなのか。通貨政策から考える。(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員) 【著者作成グラフ】欧州委員会による経済見通し(2024年秋)。ドイツとフランスがひどい状態なのに対して、2026年のウクライナの経済成長は半端ない伸び。復興需要に期待するのもわかる。 ■ あまりに対照的なロシアとウクライナの経済情勢 ロシアとの戦争の長期化を受けて、ウクライナの経済は厳しい状況が続いている。 最新の数字であるウクライナの2024年7-9月期の実質GDP(国内総生産)は前年比2.0%増と、2四半期連続で増勢が鈍化した(図表1)。一方で、同期の消費者物価は同7.2%と前期(3.8%)から上昇が加速しており、インフレが景気を圧迫したかたちだ。 【図表1 ウクライナの経済実績】 2022年、ウクライナの実質GDPは約30%縮小した。2023年の成長率は6%程度、2024年は3%台後半で着地する見込みである。つまり、ウクライナの経済規模は、開戦前の2021年を100とすると、80程度まで縮小したままである。 それに対して、この間のロシアの経済規模は105程度まで拡大しており、両国のパフォーマンスは対照的である。 この間、ウクライナの経済はロシア以上に「戦時経済化」が進んでおり、軍需が膨張しているはずだ。であるならば、ロシアと同様に軍需が経済成長をけん引しているはずだが、ウクライナの不調が際立っている理由はなぜだろうか。 それは、ロシアによる攻撃を受けて、ウクライナの経済が需要のみならず、供給の面からも強く圧迫されたことにあると考えられる。
■ ウクライナ経済の不調が続いている理由 ロシアによる攻撃を受けて、ウクライナの工業力は急減している。ゆえに、軍需品の需要が急増しても、それに対応できる能力が国内の製造業にはない。さらに、そもそもウクライナの軍需品は米欧から供給されている。つまり、ウクライナには、ロシアのような軍需品の増産圧力が国内の製造業を動かすメカニズムは存在しないのだ。 欧米からの支援があるとはいえ、ウクライナ経済がロシア以上に疲弊していることは確かである。このこともまた、ウクライナで厭戦機運が高まる背景の一つといえよう。 既にウクライナとロシアの戦争は3年近くが経過しており、双方の社会経済は疲弊している。そうした中、米国で停戦に向けた仲介に前向きなドナルド・トランプ元大統領が1月20日に再就任することもあり、年内に停戦が実現する可能性が強く意識されている。そうなると、ウクライナの復興需要が必然的に注目を浴びることになる。 ここで、欧州委員会が2024年11月に示した最新の「経済見通し」を確認すると、ウクライナの経済成長率は2025年が2.8%増に低下する一方で、2026年は5.9%増まで急上昇する(図表2)。 【図表2 欧州委員会による経済見通し(2024年秋)】 こうした予測にも、暗黙のうちに復興需要が織り込まれているものと考えられる。実際、欧州連合(EU)はウクライナの復興に多額の援助を行う予定だ。