中国競泳のドーピング疑惑が過熱 隠蔽との米側指摘に、WADAは法的措置の構え
中国の五輪競泳選手をめぐるドーピング・スキャンダルが過熱している。米国の反ドーピング機関は22日、この問題を巡って世界反ドーピング機関(WADA)の対応に問題がなかったか、調査を求めた。これに対しWADAは、隠蔽の可能性があるとの米側の批判に法的措置を取る構えを見せた。 WADAは20日、2021年の東京五輪の数カ月前に、中国の競泳選手23人から禁止薬物の陽性反応が出ていたことを認めた。これより先に一部メディアが隠蔽疑惑を報じており、WADAは報道は「誤解を招く」ものだ反論した。 WADAは、陽性反応は意図的なドーピングではなく、外部要因による検体汚染だったとする中国側の調査結果を受け入れたと発表し、非難を浴びている。 「不正行為の証拠はなかった―」 WADAの当局者は22日に会見を開き、心臓の薬に含まれるトリメタジジンの陽性反応を示した中国の競泳選手らに処分を行わなかった理由について説明した。 WADAのウェンツェル顧問弁護士は、検体汚染だったことを示す重要な要素の1つとして、複数回の検査でトリメタジジンの陰性反応も出ていたことを挙げた。 WADA ウェンツェル顧問弁護士 「検査結果はしばしば陽性と陰性の間で変化した。陽性かと思ったら陰性、陰性、陰性と続きまた陽性。そして常に低レベルだ。(中略)結局のところ、このような変動する陰性・陽性の結果は、意図的な摂取、それも微量摂取とは相容れないものだった」 中国の競泳は東京五輪で、3つの金を含む6つのメダルを獲得した。 中国の反ドーピング機関は、競泳選手全員が滞在したホテルのキッチン、廊下の上の排気装置、排水装置からトリメタジジンの痕跡が見つかったとの報告書をまとめている。だが、どのようにトリメタジジンがホテルに持ち込まれたのかについての言及はない。 WADAは、当時は新型コロナの感染対策のため、現地での調査が行えなかったとしている。その代わりにWADAは、中国の報告書に基づき独自に科学面・法律面の専門家に検体汚染説を検証させ、中国側の主張を受け入れたという。 WADA関係者は隠蔽工作はなかったと反論、こうした主張に対して法的措置も辞さない姿勢を見せた。 中国外務省の報道官も22日、報道は「虚偽」だと反論した。 だが国際競技団体からは、なぜ中国が自ら調査することを許されたのかと、圧力がかかっている。 米国反ドーピング機関のタイガートCEOは、調査を求めている。 米国反ドーピング機関 タイガートCEO 「今回の件が起きた経緯について、真相をつきとめなければならない。さらに重要なことはパリ五輪に向けて、これらの陽性反応が出た選手に対して、何らかの裁きを下し、最終的な決着をつけることだ」 タイガートCEOは、今夏のパリ五輪を前に、選手たちが公平に競技を行えるようにするだけでなく、疑念が選手たちの心に残ることがないよう、問題を解決することが極めて重要だと語った。