「保守派の重鎮」判事が急逝 政治問題化する米最高裁の後任指名問題
2月中旬、保守派の重鎮として知られた米連邦最高裁のアントニン・スカリア判事が急逝しました。大統領選挙が本格的に動き始めた直後に、最高裁に思わぬ形で生まれた空席。後任をめぐってオバマ政権と共和党の間で早くもつばぜり合いが始まっています。
保守・中道派4人、リベラル派4人に
2月13日にテキサス州南西部の牧場で死亡しているのを発見されたスカリア氏。前日から牧場に滞在し、友人らと狩猟を楽しみ、その晩の食事にも参加していました。しかし、翌朝になって部屋から出てこないスカリア氏を心配した牧場スタッフが部屋に入ったところ、ベッド横たわる格好で死亡していたスカリア氏を発見。しばらくして死因は自然死だったと発表されました。長年にわたってスカリア氏を担当してきた医師が米メディアに伝えたところによると、79歳のスカリア氏は以前から心臓に持病を抱えており、高血圧と診断もされていました。 スカリア氏は9人いる連邦最高裁判事の中では最古参で、1986年に当時のレーガン大統領によって、イタリア系アメリカ人としては初となる連邦最高裁判事に任命されています。スカリア氏は現在の最高裁判事の中では最も保守的な人物として位置付けられ、生前は中絶やアファーマティブ・アクション(特定の人種などに対して行われる優遇政策)に断固として反対し、対テロ戦争で拘束したタリバンのメンバーらに対する尋問の方法が人権上問題視された際にも、アメリカのやり方に問題はないという見解を示しています。また、アメリカが長年抱える大きな社会問題の一つである銃規制でも、スカリア氏は自衛のために個人が自宅に銃を所持できる権利を認める判決文を書いたことで知られています。 アメリカの連邦最高裁は9人の判事で構成されています。スカリア氏が死去するまでは、保守派とされる判事が彼を含めて4名、中道派1名、リベラル派の判事が4名で、これまでは中道のケネディ判事と4人の保守派判事の意向が最高裁判例に大きく影響してきました。しかし、スカリア氏が先月半ばに急逝したため、現在は保守・中道派とリベラル派のバランスが4対4に変わり、後任の判事次第では保守派に有利な判決がこれまでのような頻度で下される可能性が低くなるため、アメリカ国内ではスカリア氏の後任に注目が集まっています。