「ビール買うてきたで! あっ…」鬼の指揮官・広岡達朗にバレても飲酒を続け…伝説のヤクルト初優勝“代打の切り札”はなぜ広岡に信頼されたのか?
ヤクルトスワローズを球団初の日本一に導いた指揮官・広岡達朗は、優勝未経験のチームをどのように変革し、選手たちの心に何を残したのか。連載8人目の証言者は、現役晩年を過ごしたスワローズで初優勝に貢献した伊勢孝夫だ。禁酒を掲げる監督と、「吞まなやってられないベテラン選手」が繰り広げた、酒をめぐる愉快な攻防戦とは。厳格、冷徹、管理の鬼――そんな広岡像を覆す、二人の関係に迫った。(連載第29回・伊勢孝夫編の#1/#2、#3、#4へ)※文中敬称略、名称や肩書きなどは当時 【貴重写真】鬼と呼ばれた広岡達朗「笑顔でもちょっとコワい…」監督時代のレア写真。ヤクルト初優勝“代打の切り札”の「俳優並にシブい現役時代」「79歳になった現在の姿」も見る(全15枚)
広岡達朗の目を盗み「やかんにウイスキーと氷を…」
インタビューの最初に「スワローズ時代の広岡達朗監督について伺いたい」と告げると、「面白い話があるんですよ……」と、伊勢孝夫は饒舌に切り出した。 「ワシがヤクルトに移籍するまでは広岡さんとの接点はまったくなかったんだけど、あの人にはずいぶんとかわいがってもらいましたよ。広岡さんの時代は酒がダメでね。でも、キャンプのときなんか鍋料理ばかりでしょ。それなら、酒、吞まなやってられないでしょう。だから、水を入れる大きなやかんにウイスキーと氷をドバドバ入れて、中が透けないように湯呑茶碗でそれを呑んでね。他にも、酒にまつわる話ならナンボでもありますよ(笑)」 本人は「決して管理などしていない」と否定しているものの、一般的に「管理野球」と称される広岡監督時代のエピソードを尋ねていると、「いかに広岡さんの目を盗んで酒を呑んだか」という話がしばしば披露される。これまで、本連載においても若松勉や井原慎一朗からも同様のエピソードが紹介されてきた。伊勢の話は続く。 「……で、ワシのテーブルには酒があるということが広まると、あくる日からはヤクルトの酒呑みばかりが集まるようになってね。まずは若松でしょ、そして杉浦(享)、それに石岡(康三)さんもいたかな? みんなで水を飲んでるフリしながら鍋をつつくんだけど、まぁ、周りからは酒を呑んでるのはバレていただろうね」
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