生き延びるために土や猫を食べる人々、「忘れられた戦争」スーダンの実情
アフリカのスーダンで、クーデターにより全権を掌握した軍と、準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」による内戦が始まってから1年が経過した。この間にスーダンでは食料危機が深刻化しているものの、ガザやウクライナなどの他の人道的緊急事態に比べ、国際的な監視の目が向けられていない。市民によると、援助物資が届かない中で人々は土や葉っぱ、鳥や猫などの動物を食べて飢えをしのいでいるという。 リナ・モハメッド・ハッサンさんの家族は生き延びるためにある手段に打って出た。「子どもたちはマンゴーの木の葉を集めて食べていた。私のいとこたちは学校の隣まで歩いて行って、木の葉を集めて調理して食べていた。朝食に食べる食料が手に入るかわからなかったから」 ハッサンさん一家は首都ハルツームのバナート地区に住んでいたが、そこはスーダン軍と、敵対する準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」との間に挟まれていた。今年2月、一家は軍が支配する市内の別の場所へ逃げることができた。だが市内の十数カ所で市民が依然足止めされているという。 食料危機問題の世界的権威である「飢饉早期警報システム・ネットワーク」は今年3月、ハルツームの一部地域が「飢餓リスク」に直面していると発表した。 しかもハルツームだけではない。軍とRSFの対立は一向に収まる気配がなく、食料不足は国全土に広がっている。住民や医療関係者、援助団体によると北ダルフールの複数の難民キャンプでは、人々は土や葉っぱを食べてしのいでいるという。 一部の援助団体は、RSFが人道援助を略奪していると非難。またスーダン軍も、支援を最も必要としている人々に援助物資を届けることを妨げているという。 ロイターは本記事のためにコメントを求めたが、両者からの詳細な回答はなかった。ただ軍主導の政府は、援助物資の輸送に全力を尽くしていると主張。またRSFも略奪行為を否定し、不正を働いたものは責任を問われるとしている。 スーダン軍副司令官のジャベール中将は次のように述べた。「スーダンには必要以上の生産があり、これは心強い。これは明確な証拠であり、スーダンで飢饉が起こると言って中傷している人たちへの答えだ。スーダンに飢饉などない」 だがこの主張とは裏腹に、首都圏を構成する都市オムドゥルマンで暮らすムタワケル・アブデル・ラゼックさんは、人々は何でも食べて「生き延びようとしている」と話す。「人々は解決策を探す。例えばハト。人々はハトを食べる。ほかにも川にいるガチョウとか、あらゆる鳥たちだ。小鳥だって食べる。それが普通だった。ネコも食べていた。近所の人はネコを食べていた。何か方法を見つけないと、飢えで死ぬしかない」 食料不足の深刻度を示す「総合的食料安全保障レベル分類」によれば、スーダンでは人口の3分の1以上にあたる1800万人近くが5段階のうち3番目の「急性食料不安」に直面している。またこのうち約500万人が飢饉の一歩手前の段階にあるという。 深刻化する食料危機にもかかわらずスーダンは、ガザやウクライナなどの他の人道的緊急事態に比べ、国際的な監視の目が向けられていない。住民や国際NGOの「国境なき医師団」によれば、人々はすでに病気や栄養失調で命を落としているという。これがスーダン内戦が「忘れられた戦争」と呼ばれるゆえんだ。