〈消費電力〉と〈加湿力〉で総合判断!一級建築士がすすめる「最強の加湿器」とは
機械での加湿には2パターンの方法がある
機械を使う方法もまた2分類できます。 ひとつはエアコンです。ダイキンの上位機種に限られますが「うるるとさらら」というシリーズには加湿機能がついています。ただし、まだ家全体を加湿できるほどの加湿量ではありません。また、冷暖房の効率は良いのですが、加湿を併用した瞬間に燃費が急に悪くなるので、加湿という観点ではおすすめしません。 ここまで来てようやく本命の加湿器についてです。家電量販店で売られている加湿器は大きく4種類に分類することができます。 ご存知の方も多いと思いますが、「スチーム式」「超音波式」「気化式」「ハイブリッド式」です[図表]。 最も古くからあるのはスチーム式だと思います。加熱することでスチームをつくるのでかなり強力かつ雑菌も繁殖しにくいですが、消費電力が最も大きいのが難点です。また、加湿力が強すぎるために「障子がぶよぶよになった」という現象が起こるのはだいたいこのタイプです。 次に超音波式です。雑貨屋さんなどに置いてある壺型のような形状から白い煙のようなのがもくもくと出ているタイプがこれに該当します。超音波で水を細かい微粒子にして空中に拡散させる方式です。小さいサイズが多く手軽に設置できて、かなり省エネで音も静かです。 しかしながら、タンク容量が小さすぎて家全体を加湿するには何台も必要になりますし、掃除がきちんとできていないとカビをはじめとする雑菌を部屋中に撒き散らしてしまいます(加湿器病という言葉がありますが、その大半はこのタイプの機種が原因です)。 また、水の微粒子を吹き出すため、遠くまで加湿効果を行き届かせることが難しく、加湿器の周囲の床はビショビショになるのに遠くは乾いたままといったデメリットがあります。 3つ目は気化式です。形状は色々ありますが、要約すると円形の下敷きを数ミリ間隔で10枚から20枚重ねたものの下部だけ水桶につけて回すという仕組みです。水分が上がってきたところでファンによって風をあてて素早く乾かします(気化させる)。 この説明からわかるように、電気が必要なのは円形の下敷きをゆっくり回すモーターとファンだけです。よって扇風機程度の消費電力しか使いません。部屋が元から湿っていればあまり気化(加湿)しませんし、乾いているときはよく気化します。よってスチーム式のようにビショビショになることはありませんし、原理的にも最適な湿度になりやすい特性を持っています。 また、一度に10Lくらいまでのタンク容量をもつ機種があるのもこのタイプの加湿器に限られます。ただし、出てくる風は気化された分だけ気化熱を奪われているため、室温より若干低い温度が吹き出されます。夏の道路への打ち水や、注射時の消毒がヒヤッとするのも同じ気化熱の原理によるものです。 厳密にいうと、気化式の加湿器を使い続けると、その分室温はほんの少しだけ下がります。これを補うのが暖房(エアコン)です。エアコンの暖房効率は非常に高いので、この組み合わせが理論的には最強だと考えています。 気化式の加湿器で注意すべき点は、加湿させる「円形の下敷き」に該当するものの交換が定期的に必要か? それとも簡単な洗浄だけの定期交換不要なものなのか? を選ぶことです。 個人的には定期交換不要なものが好きですが、その中でも簡単に清掃ができるタイプのものと、かなり手間がかかるものに分けられます。これらをトータルで考えた上で、私が気に入っているのはパナソニックの大型気化式加湿器です。4.5L×2で9Lも入るので、1日1回の給水で家全体を加湿することができます。 最後がハイブリッド式ですが、これは気化式で説明したファンの風が単純に温風になっただけのタイプです。その分だけ余計に電気を使いますが、加湿能力はアップします。また出てくる風が冷たくありません。ただし、この温風をつくるときの効率はエアコンより劣ります。また、大型の機種があまりないことから、私はあまり推奨していません。 一般家庭で一番よく使われているのは空気清浄機と一体になった加湿器(加湿空気清浄機)です。これは大半が気化式を内蔵しています。ものによってはかなりの加湿量を誇るのですが、機能を兼ねながらも省スペースを実現しなければならない都合上、大半が3~4Lのタンクしか持ち合わせていません。これでは1日に家全体を加湿する量には到底及びません。 2台運用するか1日2回交換すればいいのですが、人間面倒なことはやめてしまう可能性が高いので、やはり加湿は専用の加湿器を使うことが望ましいと考えています。 松尾 和也 松尾設計室 一級建築士
松尾 和也