MVNO格安SIMの価格どう決まる?
MVNO業者が、NTTドコモと細い回線で契約すると提供するSIMの料金は安く済みますが、ユーザーが動画など大きなデータを何十分も通信をすると、すぐに回線が詰まってしまいます。そのため接続速度を128Kbpsと遅くしたり、1日に通信できる容量を30Mバイトに制限するなどの工夫が必要になります。逆に太い回線で契約すると、150Mbpsの高速接続をユーザーに提供できる一方で、月額の料金は高くなってしまいます。 どんなサービスを提供し、どんな価格を設定するのか。そこがMVNO業者の腕の見せどころになります。
サービス価格はどうやって決める?
業界最安値をうたい1Gバイトまで680円定額という価格を昨年10月に打ち出したU-NEXTの二宮康真取締役は「ここまで卸値が下がるとは思っていなかったが、卸値の低価格化を事前に見越すことで安価に提供してきた」と明かします。低価格化が進むMVNO業界のなかで、価格競争の先手を打ったというわけです。最安値をうたうことでユーザーの注目を集めるというマーケティング的な側面もありました。 また、112.5Mbpsで接続できる一方、月に1Gバイトまでという容量制限があることで、ユーザーは必要以上にデータをやりとりせず、効率的に回線が使えていると説明。実際、同社のユーザーは800Mバイト程度の利用が大半だとしています。一方で、1Gバイトよりも多く使った場合は、月額利用料金が1980円となり、3Gバイトより多いと通信速度が128kbpsになる制限をかけるといった料金プランを提供することで、コストと使い勝手のバランスを取っているわけです。 同社の契約回線数は半年で3万6000回線に達しました。1台目ニーズとしての格安SIM利用が進んでおり、LINEの認証に必要なSMSオプション(月額150円)は7割のユーザーが選択。また、月額490円でUSENの音楽放送が聴き放題になるコンテンツサービスなどを訴求することで、通信料金以外の売上も低価格でSIMを提供することに貢献しているというわけです。 二宮取締役は「スマホを初めて持つユーザーやタブレット需要も多い。低価格化が進めば、ルーターが不要になる時代が来る」と話し、格安SIMの複数持ちが将来的に進むことも視野に入れています。 このようにMVNOによる格安SIMの価格は、NTTドコモの卸価格や将来の市場の需要を見据えながら総合的に判断して価格を決めているのです。この春にはソフトバンクも提供すると伝えられています。卸問屋どうしの競争が始まれば、さらに格安SIMの世界では、価格が安くなったり、サービスに多様性がでてきたりといい影響が出てくるかもしれません。