「妻子を奪われてから9年、生きる意味が見出せません…」熊谷6人殺害事件、遺族が語る“理不尽すぎる現実” 犯人のペルー国籍男性は死刑回避で服役中
バカバカしい裁判
司法に裏切られたとの思いから、加藤さんは極度の人間不信に陥った。「家族のため」という生きる目標も失い、何度も3人の後を追おうと考えた。それでも否応なく続いていく人生で、自分は何を糧に、そして何を支えに生きていけばいいのか。加藤さんは以前、こんな心境を吐露していた。 「裁判で理不尽な判決を受けてから、今の社会は本当に正しいのかって思うようになりました。もし自分で変えられるのであればそういうことにエネルギーを使いたい。もっと社会の役に立つような自分でいたい」 だが、具体的に何をして良いのかが分からず、模索を続けた。事件発生から約3年後に復帰した職場では、組織の人間関係に疲れてしまい、養う家族もいないから仕事に力も入らない。4年半勤めた結果、精神に不調をきたし、休職した。 その頃から加藤さんは、「ただ生きているのも辛い」という苦境に追い込まれ、あらゆることに対して厭世観が強まった。 「何を糧に生きていけば良いのか分からなくなりました。裁判にしても、どんなに頑張ったところで結局は日本の法律にねじ伏せられ、これ以上望むのがバカバカしい。SNSに投稿して同意を求めるのも疲れてしまいました。色々なことに興味を失ったっていうか」
前向きになれる出来事
一体、自分は何のために生きればいいのか。 繰り返される問いに悩み続けた結果、最近、少しだけ前向きになれる出来事が起きた。 きっかけは今年1月、市内にある社会福祉協議会を訪ねた時のこと。そこで養護施設のボランティアがあると聞かされ、自ら施設に電話を掛けた。話を聞きに行って興味を持ち、翌2月からボランティア活動に従事し始めた。施設にいるのは5~6歳の子どもから高校生ぐらいの若者たちで、大半が親からの虐待を受けていた。 「その子供たちと遊んだり、一緒にゲームをやったり、買い物に行ったり。個別の事情は聞いてはいけないルールになっているので、皆がどこから来たのかもわかりません。でも2人の男の子と仲良くなりました」 活動するのは土日で、1ヶ月に2回ほど通っている。生きる糧が見出せなかった加藤さんにとって、子供たちと遊ぶささやかな時間の中で、自身の存在意義を感じられるようになったという。 「自分が必要とされているかどうか分かりませんが、誇りを持てるような生き方ができればと思います」