ウクライナ戦争の行方を示唆!? ブルガリア空軍「ミグ29」→「F16」転換の実情
今、ウクライナ戦争の最前線では、ウクライナ軍(以下、ウ軍)の武器弾薬砲弾ミサイルが枯渇しようとしている。砲弾発射数はロシア軍(以下、露軍)10に対して、はウ軍1。絶対的劣勢下にあるのだ。 【写真】基地を飛び立つミグ29 4月24日に米議会で、対ウクライナへの9兆円の軍事援助予算が認められ、数ヵ月ぶりに援助が再開された。露軍はその援助物資が届く前に、東部各戦線で反撃を開始してジリジリと進撃。さらに、米国からの軍事援助が止まり、各種の地対空ミサイルの欠乏が始まったウ軍に対し、露軍はウクライナ国内各地への空爆を強化している。露空軍戦闘爆撃機は、100km以遠から1tを超える精密誘導滑空爆弾を投下。ウ軍はそれに対してなす術がない。 窮地に立つウ軍が期待しているのは、西側から供与されるF16戦闘機だ。F16さえ来れば......と切望するがなかなか来ない。一体どうなっているのだろう。世界中の戦闘機を撮影し続けるフォトジャーナリストの柿谷哲也氏はこう言う。 「ウクライナ国内でのミグ29戦闘機からF16への転換過程を取材するのは、不可能だと思われます。しかし今、その転換をしている最中のブルガリアならば、その端緒を掴(つか)めるかもしれません」 そうしてブルガリアに飛んだ柿谷氏は、F16導入の最大の難関をこう語る。 「ミグ29は旧東側陣営の整備されていない滑走路からの離着陸が可能でした。しかし、第四世代機とも言われるF16ブロック70は、そんな未整備の滑走路での運用は不可能です。ブルガリアが運用するためには、米国標準の滑走路、誘導路など、飛行場施設を建設しなければなりません」 要するに、ミグ29はソ連製UAZ四輪駆動トラック、F16は高速道路を快速するトヨタのレクサスだと考えればいい。 「現在、ブルガリア空軍の主任務は、国際空域保護プログラム『エアポリシング』と、そのための飛行訓練ですが、各機一回の飛行時間は極めて短く、その理由は機体の維持に原因がありそうです。 13機のうち半数は部品取りとなっているとされ、残りの機体も整備が多く、稼働機は4機程度とされている。自分が去年と今年に計20日間滞在したプロブディフ基地の6機のうち、1機の単座型と2機の複座型だけが飛行し、残り2機が飛ぶことはなく、1機は整備作業を続けていました」 この悲惨さは、ウクライナ戦争の余波を受けたものだ。 「そのミグ29のオーバーホールはロシアで行なわれていました。しかし、ブルガリアのメディアによるとウクライナ戦争後は、特にエンジンに関しては予定通りの整備ができなくなった。特にミグ29のエンジンは飛行時間350時間で、整備が必要なエンジンは深刻な状態にあるといいます。 戦争直前のウクライナで6基のエンジン整備し、陸路で搬送できましたが、戦争が始まり継続できず、また、戦前に4基の中古エンジンをポーランドから輸入しており、今後はスペアパーツの供給の可能性があるものの、ポーランドにも十分な数が無いとされるだけに、これも不透明となっています」 電子機器や構造は共食いや国内整備できても、エンジンはそうはいかない。 柿谷氏はそのわずかに飛んでいるブルガリア空軍ミグ29の撮影に成功。離陸した滑走路を見て欲しい。東側基準で作られた滑走路は、現代の西側戦闘機にとっては「オフロード」なのだ。 「トルコ空軍のF16の駐機場の写真と見比べて欲しいです。トルコ空軍の飛行場は完璧に米国標準になっています」 「私は、F16の配備先と言われるグラーフ・イグナテ基地に行きました。ここは、米国標準の飛行場建設のために滑走路・格納庫の工事が行なわれています。基地の周辺を見てまわりましたが、外側から基地の内部を撮影できず、写真にあるミグ21を展示された廃墟のような入り口だけが撮れました。この入り口への道と滑走路が同じ舗装ならば、F16は使えません」 肝心のF16は、ブルガリアにいつ来るのだろうか。 「米国からF16C/Dの最新版、ブロック70を8機購入し、2025年3月にこの基地に到着する予定になっています」 退役する13機のミグ29はウクライナに供与されるか?