2024年のテーマは「磨き上げる」――FMVのふるさと「島根富士通」は何を目指すのか?
デスクトップPCの生産ラインでは「パレタイズロボット」を導入
島根富士通では2024年度、新たな設備としてデスクトップPCの生産ラインに「パレタイズロボット」を導入した。その名の通り、パレタイズロボットは「パレットに荷物を載せるためのロボット」で、具体的には梱包(こんぽう)を終えたデスクトップPCをパレットに自動積載してくれるものだ。 組み立てラインから運ばれてきた梱包済みデスクトップPCを手作業でコンベアに載せると、コンベアに設置されたカメラが梱包箱に貼られた二次元コードを読み取る。すると、仕向け先別に分かれた4つの「ステーション」に本体を持ち上げて移送し、パレットに積み上げる――投入から搭載までの所要時間は、平均で17.4秒だという。 パレタイズロボットが実際に動いている様子を動画に収めたので、見てみてほしい。 このロボットを導入したことで、従来は人手で行っていた作業が削減でき、省人化と共に、作業負荷の大幅な軽減も実現できたという。 同じことを手作業で行うと、低い位置から高い位置まで積み上げる動きも求められる。しかしデスクトップPCの場合、1台当たり約7kgと重量が大きいため、作業者にかかる身体的負荷が高い。 またデスクトップPCの場合、パレットには10段程度の梱包済みPCが積載される。パレタイズロボットを使用することで、作業者ごとの積載スキルのばらつきが抑えられ、輸送時に荷崩れが起こりにくく、運搬もしやすくなるというメリットもあるそうだ。 同社では1日約5000台のPCを生産している。そのうち、デスクトップPCが占める割合は約20%と、“台数”で見ればノートPCが圧倒的に多い。しかし、配送用パレットの数では、およそ3分の2がデスクトップPCが占めるという。 ピザボックス型の薄型の梱包材を使っていることもあり、ノートPCは1つのパレットに240台を積載できる。だが、デスクトップPCでは同じパレットに40台しか積載できない。同じ“台数”なら、6倍のパレットが必要となってしまう。ゆえに、デスクトップPCの生産ラインからパレタイズロボットを導入したのだという。 なお、現在稼働しているパレタイズロボットでの積載に対応する梱包箱は、1種類のみとなる。「1種類だけ?」と思うかもしれないが、同社が作るデスクトップPCのうち、約8割がこの箱を使っているので、1種類のみの対応でも省力化に大きく貢献しているそうだ。 またこのロボットでは、最大4つの「ステーション」(積載場所)を設置可能で、ステーションを出荷先別にすることで“仕分け”をしやすくできる。出荷台数が多い東京/大阪のデポ向けの出荷に活用しており、全デスクトップPCのうちの3割で本機能を活用できているという。 なお、他のデスクトップPCなどは、現在も手作業での積み上げを行っている。今回の導入の成果を見極めつつ、パレタイズロボットの導入範囲を拡大する検討を行うとのことだ。 島根富士通では、2024年度下期からはWindows 10のサポート終了(いわゆる「EOS」)を控えた買い替え需要がスタートすると見込んでおり、それを想定した増産体制を敷くことになる。 また、同様に2024年度下期からは、GIGAスクール構想の第2期(いわゆる「Next GIGA」)に更新需要に向けたPCの生産を開始する予定で、それに向けた新たなラインの構築にも取り組むことになる。加えて、NPUを搭載する「AI PC」の生産に向けた準備や、富士通が一括受注した生命保険会社向けPCの生産の本格化も進めるという。 2024年度上期の島根富士通は、2025年度以降の旺盛な国内PC需要に対応した増産や、次の成長に向けた準備に注力するフェーズにある。
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