2024年のテーマは「磨き上げる」――FMVのふるさと「島根富士通」は何を目指すのか?
従業員への教育機会をさらに拡充
同社では、従業員への教育機会の提供にも継続的に取り組んでいる。2023年度は就業時間の4%分の教育機会を用意し、受講実績は3.4%となった。それに対して、2024年度は就業時間の5%分の教育機会を用意し、3.7%の受講実績を目指すという。具体的には、1人当たり年間70時間の教育を受けてもらうことを目指すそうだ。 この目標を逆算すると、全社員が月平均で約6時間を教育時間に割くことになる。生産ラインが毎日稼働している現場(工場)として、これは十分に高いハードルだ。しかし、この取り組みは全社を挙げた重要な取り組みとして位置付けられており、一般教育だけでなく、現場で役立つ専門教育にも多くの時間を割り当てている。
生産台数を増やしつつ、スマートファクトリー化も推進
島根富士通は、富士通クライアントコンピューティング(FCCL)の子会社として富士通ブランドのPCの製造を担っている。2024年度、同社はPCの生産台数を前年比1%増となる156万台と見込む(2023年度実績は155万台)。また、売上高は4%増、営業利益は2%増を目指している。 神門社長は「2025年度以降は、生産台数が一気に増加する。2024年度は、それに向けた体質改善の1年とし、カイゼンしなくてはならない箇所は、ラインを止めてでも見直しを図る姿勢で臨む」と意気込む。 島根富士通のPC生産能力だが、近年では2020年度、同社としては過去最高の約240万台を達成している。しかし、皆さんご存じの通り、ここ数年の国内PCの市場は需要の低迷が続いている。それに合わせて、同社のPC生産台数も減少している。 同社では、PCの需要が落ち込んでいる“今”こそ、カイゼンの好機だと捉え、生産ラインの中に入り、無駄取りの作業を進めるなど、ものづくり改革でも“原点回帰”を促進し、ものづくり体質の強化を図る考えだ。 一方で同社は、スマートファクトリーの進化に関する取り組みも手綱を緩めずに進める方針だ。 具体的には、AGV(無人搬送車)による部品供給をノートPCの全生産ラインに展開したり、混流ライン(※2)でもPCのボディーへのラベル貼り付けを自動化したり、といった取り組みを開始している。さらに今後は、協働ロボット(※3)の利用領域の拡大、AMR(自律走行搬送ロボット)の導入、パレタイズロボットの導入などを通して自動化率を向上。さらに、データの活用率の向上も図るという。 (※2)異なる種類の製品が混ざり合って流れてくる生産ライン(※3)人と協調して稼働するロボット 神門社長 これまでは、自動化できる箇所からロボットの導入などを始めていた。今後は、導入したロボット同士をつなげていく必要がある。また、搬送の自動化は進展したが、今後は組み立て工程を中心に、自動化装置のインライン化に取り組むことになる。 生産ラインにおける自動化率は、2023年度の実績で37%を達成したという。2024年度は、これを41%まで引き上げる目標を掲げている。また、データ活用率は、2023年度の26%から32%に向上する計画だ。データの活用は、特に「生産性向上」「品質向上」で進めたいという。 神門社長 せっかくデータを取得しても、今までは活用しきれていないという課題があった。この改善が、2024年度のテーマの1つとなる。同年度中には、プリント基板工程における自動倉庫の導入と、リール部品などの自動供給も検討していく。 (これを実現できれば)プリント基板工程での自動化率は80%程度にまで高まり、かつて約200人が従事していた同工程の人員を、70人台にまで削減できるので、余った従業員をより付加価値の高い業務にシフトできる。プリント基板ラインにおけるデータ活用も加速したい。