“かなりリアリティのある話しになってきた” 宇宙ビジネス ―当事者が語る月面での取り組みの現在地と、 世界の中で日本企業が果たす役割とは?
注目を集めた“宇宙ビジネス”に関する特別企画「Internet×Space Summit」
2024年6月12日(水)~14日(金)の3日間、幕張メッセで日本最大規模のインターネットテクノロジーイベント、「Interop Tokyo 2024」が行われた。出展者数は542、総小間数が1,664と、昨年を上回りコロナ禍以降最大規模での開催となり、3日間を通じ12万人を超える来場者が参加した。本年度のInterop Tokyoのメインテーマは「AI社会とインターネット」。会場ではAIや生成AI関連の展示や講演・セミナープログラムが目立ったが、昨年に引き続き開催された“宇宙ビジネス”に関する特別企画「Internet×Space Summit」のエリアにも注目が集まっていた。 「Internet×Space Summit」では、展示ホール内に設けられたオープンステージでの講演や、関連企業による出展ブースのほか、会議棟の講演会場ではNASAのJim Schier氏による基調講演なども行われた。 さらに基調講演では、世界8カ国が参加する月面での取り組み、「アルテミス計画」に参加するJAXAや企業の担当者が登壇、これまでの活動内容の紹介や、今後世界の中で日本が果たすべき役割などについて議論するパネルディスカッション「月面での通信がもたらす新たな宇宙ビジネスの創出へ」が行われた。 登壇者は、日本の宇宙探査活動のとりまとめを行う宇宙航空研究開発機構(JAXA)の山中浩二氏、月面でのプラント建設を進めている日揮グローバル(株) の宮下俊一氏、月面での通信インフラの構築を目指すKDDI(株)の市村 周一氏が登壇、Interop Tokyo 実行委員長で慶應義塾大学 教授の村井純氏も加わり、元JAXAで慶應義塾大学 教授の神武直彦氏がモデレーターを務めた。
アルテミス計画における日本の役割と民間企業の参加
セッションの冒頭、JAXAの山中氏からアルテミス計画の中で日本がどのような役割を担っているか説明された。それによると日本は新たに建設が予定されている月周回有人拠点「ゲートウェイ」の生命維持装置などの環境制御システム、物資補給のための宇宙船の開発を通じて貢献する。また月面探査車「有人与圧ローバー」の研究開発にも取り組んでおり、この貢献により日本人の宇宙飛行士2名が月面に行くことが可能となったという。 次に日揮グローバルの宮下氏は、海外を中心とした大型エネルギープラント事業を例に挙げ企業紹介を行い、スクリーンに映し出されたキービジュアルをもとに、2050年に目指す月面プラントの世界観について語った。 続いてKDDIの市村氏は、月面通信の構想について触れ、月面のレゴリスと呼ばれる細かい粒子が電波に影響を与える可能性や、5Gのアンテナを立てるためのロボット活用などについて紹介した。 議論が進む中でJAXAの山中氏は、小型月着陸実証機 SLIMの「降りたいところに降りる技術」などの成功や、月の水を調査するLUPEXプロジェクトや、有人ローバー開発などを紹介、日本が培ってきた宇宙開発技術や自動車技術の信頼性を強調、慶應大 村井教授に民間企業の関与が増え宇宙開発が政府だけの事業ではなくなったことを指摘されると、今後日本の民間企業が月面開発に積極的に参加することについて歓迎する態度を示した。