人型ロボット分野で中国が先行
【東方新報】人型ロボットは、今後新たな成長段階を迎えることが予見され、中国のハイテク・ベンチャー企業が今後の巨大なチャンス求めて続続参入しているビジネス分野と言われている。 北京市で21日から25日まで開催された「2024年世界ロボット会議(2024 World Robot Conference)」では、人型ロボット(ヒューマノイド)が主役となった。 「中国科学技術協会」が主管する「世界機器人合作組織(World Robot Cooperation Organization)」が大会で発表した報告書によると、人型ロボットは人間の生産とライフスタイルを大きく変革し、社会を新しい知的発展の段階へと導き、さまざまな産業に従来の構造を破壊するほどの変化をもたらすとしている。 報告書は「人型ロボットは、工業分野では危険な生産工程に幅広く参加し、生産効率と安全性を大幅に向上させる。科学探査、災害救助、極限環境でのセキュリティ検査などのタスクを実行する上で、重要な力となる」と指摘している。 「世界機器人合作組織」の責任者は「複数の異なる情報源から情報を収集し統合処理する『マルチモーダル大規模言語モデル』はユーザーが入力した指示に基づいて、テキスト、画像、音声、ビデオを生成する能力を持っており、人型ロボットに対して、増強された理解力、知覚力、意思決定能力を提供することが出来る」と説明する。 業界関係者は、中国のロボット企業は、人型ロボット開発の最前線にあり、下肢と上肢の両方の機能において大きなブレークスルーを達成し、製造分野における最先端ロボット技術の応用分野を活気付かせていると言う。 広東省(Guangdong)深セン市(Shenzhen)を拠点とするロボット開発企業「深セン市優必選科技(UBTech Robotics)」は今回、自動車工場での仕分け、品質検査、自動車部品の取り付けなどの作業を行うことができる産業用人型ロボット「ワーカーS(Walker S)」を展示している。 同社は7月、中国で最も早い時期に設立された合弁自動車メーカーの一つ「一汽フォルクスワーゲン(FAW-Volkswagen)」と協力し、高度に知能化された柔軟に対応出来る生産ラインと無人自動車工場を開発すると発表した。 この提携は、山東省(Shandong)青島市(Qingdao)にある一汽フォルクスワーゲンの工場で、自動車製造作業に統合的に人型ロボットを投入し、ボルト締め、パーツの組み立てやハンドリングなどの作業を人型ロボットに任せることを目的としている。 「深セン市優必選科技」のチーフ・ブランド・オフィサーは「人型ロボットの出現は、人びとの生活や働き方を変え、生産効率や生活の質の向上を可能にするものだ。人型ロボットは、知的な製造業で重要な役割を果たすだけでなく、個人向けサービス、医療、教育などの分野でも使用される可能性がある」と、その可能性の広さを強調する。 中国工業・情報化部が発表したガイドラインによると、中国は25年までに人型ロボットのイノベーション・システムを構築することを目標とし、中核となる部品の安全かつ効率的な供給の確保のため、幾つかの主要技術においてブレークスルーを達成させるとしている。 また27年までには、人型ロボットの安全で信頼性の高い「産業・サプライチェーンシステム」を確立するとしている。 同社とパートナーが共同編集した業界レポートでは、中国の今年の人型ロボットの市場規模は27億6000万元(約561億円)、29年には750億元(約1兆5253億円)に達する見込みで、その時の中国の市場規模は世界全体の32.7パーセントを占めると予想している。 「国際ロボット連盟(IFR)」のマリーナ・ビル(Marina Bill)会長は「中国では10年前に約6万台の産業用ロボットが導入されたが、それが現在は29万台にまで増加している。これほど急速な発展を遂げた国は、世界でもほとんど無い」と話す。 世界的コングロマリット企業「ABB」のロボット事業部のマーケティング・セールス部門グローバル責任者で製品ライン・ソフトウェア・デジタル部門の責任者でもある同氏は「中国はロボット工学にとって非常に重要な国であり、我が社は中国での事業を継続的に拡大してきた。つい2、3年前、我が社は上海にメガファクトリーを建設して、ロボットの大規模な生産を行っている」と紹介する。 同社はグローバル製品の研究開発を中国で行い、様々な分野で現地のサプライヤーと協力していくという。(c)東方新報/AFPBB News ※「東方新報」は、1995年に日本で創刊された中国語の新聞です。