囲碁ファンが喜ぶ仕掛けがいっぱい…映画「碁盤斬り」の楽しみ方[千春&明夏の女流棋士ここだけの話]
話題の映画「碁盤斬(ぎ)り」もうご覧になられたでしょうか? 私・安田明夏は封切り(5月17日)から5日目、朝8時半から気合を入れて映画館に足を運びました。主人公は草彅剛さん演じる柳田格之進。冤罪(えんざい)を着せられ、妻を亡くし、娘と2人でつつましく暮らしていたのですが、ある日、冤罪事件の真相を知り……という復讐(ふくしゅう)時代劇。映画のタイトルから想像できる通り、主人公の格之進は囲碁をこよなく愛しており、囲碁を軸に物語が進んでいきます。 【写真特集】一力遼棋聖の就位式には「碁盤切り」で脚本を担当した加藤正人さんも駆けつけ、祝辞を述べた
井山王座の碁石を持つ手が美しすぎて
この映画で囲碁指導を担当された棋士の一人、岩丸平七段に、撮影時のこぼれ話を伺いました。エキストラとして出演された井山裕太王座と藤沢里菜女流本因坊について、「囲碁フォーカス」やX(旧ツイッター)でも話題となっていましたが、井山先生の碁石を持つ手つきがあまりにも美しく、手を見ただけで井山先生だとわかった、という囲碁ファンもいたようです。ただ、現場では、その手つきがあまりにも目立ちすぎて、監督からの指導で、少し控えめに打たれたのだとか(笑)。 それでも見ている人の目をひくわけですから、井山先生の存在感がいかに圧倒的か、ということですよね。藤沢先生は出演した棋士の中で唯一セリフがあったのですが、もともと台本にあったわけではなく、急きょ現場で、セリフありに決まったそうです。映画ではすごく自然だったので、それを知ってびっくり! さすが里菜先生です。
岩丸平七段の棋譜もひそかに登場、対戦相手は?
また、映画の中で打たれる碁は基本、江戸時代の古碁を参考に創作したものだそうですが、なんと岩丸先生の棋譜もひそかに登場しているらしいのです!(もちろん監督の許可あり) どなたと対戦した棋譜だったのでしょう(笑)。もう一度、映画館に見に行って探してみたいと思います。
今回の映画では、お城でも、庶民の間でも囲碁が当たり前のように日常に溶け込んでいる様子が描かれていて、とてもうれしく感じました。あまりに囲碁シーンが多過ぎて、草彅さんも「格之進って囲碁ばっかり打ってるね」とおっしゃっていたそうです(笑)。映画のキャッチフレーズは「復讐劇・感動のリベンジ・エンタテイメント」とのことですが、囲碁ファンには一層、いろんな楽しみ方ができる映画だと思います。そして、フランスに続き、韓国でも劇場公演が決定とのこと! 世界で碁盤斬りが楽しまれますね。 映画といえば……。日本棋院100周年SUPER IGOプロジェクト第1弾となる、囲碁をテーマにした映画「センティエントゲーム SENTIENT GAME(仮)」が2025年に公開予定です。どんな映画になるのか、こちらもとても楽しみです。
筆者プロフィル
安田 明夏( やすだ・あきか ) 囲碁棋士。初段。日本棋院関西総本部所属。2002年8月24日生まれの21歳。兵庫県出身。堀田陽三九段門下。2021年度入段。22年4月から24年3月までNHK・Eテレ「囲碁フォーカス」で司会を担当、同年4月からはNHK杯テレビ囲碁トーナメントの司会を務めている。