東北カップで連覇した仙台８９ＥＲＳの選手たち

　Ｂ１、Ｂ２リーグの２０２４―２５シーズンは３日に開幕し、東北勢は５日に開幕戦を迎える。今季から落合嘉郎ヘッドコーチ（ＨＣ、４２）が指揮を執るＢ１仙台８９ＥＲＳはホームで横浜ＢＣと対戦。クラブ創設２０周年の節目にチャンピオンシップ出場、そして初優勝を目指して突き進む。（取材・構成＝秋元　萌佳） 　Ｂ１仙台は昨季、２７勝３３敗で東地区６位。目標の勝率５割には届かなかったものの、クラブＢ１史上最高勝率（４割５分）、ホーム全３０試合満員と躍進した。さらにクラブ創設２０周年と節目の年に就任した落合ＨＣは「歴史の中で重みあるこの１年に任せてもらったことは本当にありがたいこと」と語る。 　今季もスローガンに「Ｇｒｉｎｄ！（グラインド）」を掲げ、ハードな守備とアーリーオフェンスを武器に戦う。今季はブラジル代表のＰＦクリスティアーノ・フェリシオ、ＮＢＡでもプレーし経験豊富なＳＦスタントン・キッドらが加入し「外国籍に自分たちでプレーメイクできる選手が集まった」。その分、外国籍選手がボールを保持する時間が長くなることが予測され「頼りすぎればターンオーバーはさらに増える」と分析する。昨季のターンオーバー数は１試合平均１３・３個でＢ１全２４チーム中８番目に多かった。 　課題解決のために期待するのが「ボールをシェアする意識」だ。精度の高い素早いパスで全員がボールへ関わって流れをつくる理想の展開に向け、日本人選手らの活躍も必要になってくる。今季は１９０センチ超の選手を３人擁してサイズアップを図っただけでなく「跳ぶ、走る、投げるという身体能力の高い選手を集めた」と時には個人で打開する力も持つ選手をスカウト。ＳＦ半沢凌太やＳＧ石橋侑磨らシュート力がある若手も加入し、得点力アップに期待がかかる。 　昨季は２点シュートの平均試投数は４４・１本でリーグ１位も、３点シュートは２３・７本と同２０位。「一人一人の個性を見ながら、外と中を使い分けていきたい」と話し、「だからこそボールをシェアされた時にはアグレッシブでいてほしい」とノーマーク時には積極的に打つ姿勢などを求めていくつもりだ。 　１８年から６年間アシスタントコーチを務めたが、今季はヘッドコーチとしてのシーズンが始まる。プレシーズンは東北カップで連覇を果たすなど、天皇杯の千葉Ｊ戦以外は勝利し、７戦で６勝１敗と好調。「勝利という結果を積み重ねながら、課題が見つけられたことが本当に良かった」と振り返る。就任から「本当に開幕まであっという間でした」とめまぐるしい日々を送り「まだまだ自分が決断するという覚悟が足りないなと感じます。より速く正確な決断をするために、繰り返して学んでいくしかない」とチームを率いる難しさにも直面中だ。 　今季の目標は初のチャンピオンシップの舞台、そして初優勝だ。開幕戦で対戦する横浜ＢＣは日本代表ＰＧ河村勇輝が退団したが「だからこそ全員がリーダーシップを持って戦えている」と警戒し「一度ミスしたことを繰り返さず、切り替えて食らいついてゲームをつくっていきたい」と語る。１２人中７人が新加入とフレッシュな顔ぶれになったチーム。キーマンはあえて挙げず「日替わりでどれだけヒーローが出てくるのか期待したいです」。全員が個性を爆発させ、節目のシーズンに歴史を塗り替える。 　　◆落合　嘉郎（おちあい・よしろう）１９８２年８月１３日、仙台市生まれ。４２歳。仙台高から白鴎大に進学。卒業後は同大でアシスタントコーチ（ＡＣ、０５～０９、１３～１４年）、監督（１４～１７年）、ＨＣ（１７～１８年）を務めた。１８年夏に仙台８９ＥＲＳのＡＣに就任。