大風呂敷(10月16日)
一体、どなたが名付けたか。「福島大風呂敷」。福島市のまちなか広場に、縫い合わせた数メートル四方の古布を広げる。県都の夏の風物詩は今や、県内外のイベントにも貸し出される▼「大風呂敷を広げる」の聞こえは良くない。「できそうにないことを言ったり計画したりすること」と、広辞苑にある。対して実物は縁起がいい。山陰地方には婚姻などの際、家紋入りの大風呂敷に祝いの品を包む風習があった。ある菓子店が自社のホームページで紹介している▼衆院選が公示され、12日間の舌戦に入った。鳥取県選出の党首が率いる政党は「暮らしを守る」を公約の柱に。物価高対策で給付金の支給が盛り込まれた。地元のしきたりに従い、大風呂敷に包んで有権者に差し出す心境か。他党もエネルギー料金の補助延長、税額控除と百花繚乱[りょうらん]の感がある▼福島大風呂敷は、本県出身の音楽家や市民有志が震災の年に始めた。大きな夢を語り合い、「フクシマ」の豊かな未来をつくろう―。復興を目指す前向きな思いが原点だ。「国の将来を、こうつくる」。選挙の論戦も、夢や理想をぶつけ合うのは大いに結構。広げた大風呂敷に、中身を詰めてお返ししてもらえるならば…。<2024・10・16>