おしの沙羅「″文字の色気″を大切にして書いています」 グラドル引退から約3年で師範に
“書道家”としての才能が開花
まっすぐ伸びる背筋に、真剣な眼差し、流れるような所作――ゆっくりと筆を動かしながら、何度も白紙に文字を書き続けた後、「できた」と小さく呟いた。 【写真をみる】おしの沙羅 書道を披露中も"胸元"大胆衣装で"色気がすごい"…! 「書道のように『道』のつく芸道は、邪念を持たず”無”でいることが大事。だから、この字を選びました」 妖艶な微笑みを浮かべてそう話すのは、女優で書道家のおしの沙羅(29)だ。’15年にレースクイーンとしてデビューし翌年グラビア活動を開始。″完売クイーン″と称されるほどの人気グラビアアイドルに昇りつめた彼女は、25歳の時に突然グラビアを引退。女優業に専念することを発表した。現在はテレビドラマやNetflixなどの配信ドラマを中心に女優として活躍する一方、″書道家″としての才能が開花し話題となっている。 「昨年、デビュー当時から名乗っていた『忍野さら』を『おしの沙羅』に改名し、心機一転しました。同じタイミングで、書道家『雨楽(うら)』という雅号で始動することもSNSで報告。書道は師範をしていた祖母の影響で幼少期に習っていたのですが、当時は楽しさが見出せなくてすぐ辞めてしまったんです。グラビアを引退後、自分と向き合っていく中で『また書道を習いたい』と思い、近所の教室に通い始めて。そこから一気にのめり込んでしまい、約3年で師範を取りました」 今年の冬ドラマ『ジャンヌの裁き』(テレビ東京系)では、女優としてのレギュラー出演に加え、ドラマの題字を手掛けてほしいというオファーもあった。 「弱者が強者に立ち向かうというストーリーだったのですが、『不器用さの中にも意志の強さを表現してほしい』と監督に依頼され、トータル100枚ぐらいは書いたかな。でき上がった作品を見て、監督や共演者の方から喜んでもらえてやりがいを感じました。自分ではわかりませんが、『女性らしい字だね』と褒めていただけることが多いです。書道では『線が生きている』『線が死んでいる』と表現するのですが、そういう″文字の色気″みたいなものを大切に書いています」 また、今夏の日曜劇場『ブラックペアン シーズン2』(TBS系)では医院長室に飾られた書作品も手掛けた。内野聖陽(56)演じる病院長の背後に映し出された『燎』の美しい文字は、視聴者からも反響を呼んだ。 「どんな作品も100枚くらいは書きますね。どんなに書いてもダメな時があって、そういう時は潔(いさぎよ)く諦(あきら)める。逆に、たくさん書いても結局最初に書いた作品が一番いい時もあって。一枚ずつ文字の色気が違うのも書道の醍醐味かもしれません」 女優と書道――。双方は互いにどのような影響を与えているのだろうか。 「表現するという意味では一括(ひとくく)りですけれど、やってみると対極にあるもの。芸能の仕事は求められて、現場に立たないと始まらないですが、書道は自分でレールが敷けることに魅力を感じます。個展を開催する際も、ギャラリー探しから制作まで自分のペースで自走できますから。二刀流は良いバランスだと思います。あと、書道は言葉の意味を細かく調べるので、そういった深掘りする作業は、役作りをするうえで良い影響を与えてくれるかもしれません」 ◆グラビアへの想い 現在は二刀流で活躍するおしのについて、グラビアアイドル時代の印象が残っている読者も多いだろう。’17年には20誌以上の表紙を飾り、グラビア界を席巻。人気絶頂で″グラビア引退″を決断した背景は何だったのか。 「現役時代は『今だからできることがしたい!』という思いが強かったんです。何年かグラビアの仕事を続けていくなかで、私にとっては長くやっていけることではない、という思いがありました。自分の中で日常的に水着になる仕事は、若さと勢いがあったからこそできたこと。これから先は、5年後、10年後と、続けることでより豊かにしていけることがしたいと考えるようになり、グラビアと並行してやらせてもらっていた女優業に専念することを決断しました」 そうして新しい道への一歩を踏み出した。その誠実な姿勢からは想像できないが、昔は傍若無人だったそうだ。 「幼少期から中学生まで、バレエ、英語、水泳、書道、バドミントン、学習塾と、とにかく習い事をたくさんやらせてもらっていました。とりわけ、4歳から始めたバレエは思い入れが強く、バレリーナになることを夢見てコンクールに挑戦するほど熱中していたのですが、中学2年生の時に挫折してしまって。自分の中で何かがプツンと切れてしまい、学校をサボるようになったり、遊びまわって家に帰らなかったり……。結果、親とも不仲になってしまいました」 家族と疎遠になったがゆえに、仕事のことも話していなかったという。 「当時、両親とはギクシャクしていたのでレースクイーンもグラビアもちゃんと伝えていなかったんです。でもある日、父が電車の中吊り広告で私のグラビアを見つけて大激怒。すぐに呼び出されて、正座をさせられながら、『なんで言わないんだ!』と怒られて。ありがたいことにグラビアや写真集、DVDなど、いろんなことをさせていただき、結果も出してはいたのでそれ以上は何も言われませんでした。ただ、母には『水着がギリギリだからね』とクギを刺されたのを覚えています。今では頻繁に連絡を取ったり、仕事も一番に応援してくれて、心から感謝しています」 12月3~8日には、4度目となる個展を東京・京橋で開催予定だ。女優、そして書道家としての道を歩き始めた彼女が、今後目指す将来像とは――。 「女優としては、″人生の代表作″になるような映画に出演するのが夢です。書道家としては、海外で個展を開くという野望があります。過去に銀座で開いた個展では、『旅の記念に』と作品を購入してくださる外国人ツーリストの方が多かったので手応えを感じています。今の時代、AIや機械で量産されるものが多いので、書道のように、自分の手でしか生み出せないものを作り続けていきたいです」 大きな野望に挑戦し続ける彼女の名前が、海外に轟く日も近いのかもしれない。 『FRIDAY』2024年12月13・20日合併号より
FRIDAYデジタル