70年前の紬カラー映像を上映 米ハーリング氏撮影、奄美市
米軍政下の奄美大島で本場奄美大島紬が作られる様子を撮影した文化人類学者ダグラス・G・ハーリング氏の遺作映像が21日、奄美市名瀬の鹿児島大学国際島嶼(とうしょ)教育研究センター奄美分室で公開上映された。70年前の貴重なカラー映像を一目見ようと80人余りが来場し、紬製造の伝統技術や当時の職人の姿に感嘆。「父が映っている」「(紬を)改めて誇りに思う」などの声が聞かれた。 ハーリング氏は1951~52年、米軍政下の奄美大島で人類学的調査を実施。島民の暮らしを記録した映像の一つに紬の製造工程を追った「忘れられた島:奄美大島・紬:きめ細やかな手工芸」があり、同氏の所属していた米国シラキュース大学に保管されていた。 上映会は、ハーリング氏が残した映像や写真を基に奄美で聞き取り調査を行うプロジェクトの一環で、鹿大国際島嶼教育研究センターと英国オックスフォード大学オールソウルカレッジの主催。 公開された映像は約40分間。柄の原図作成から糸繰り、締め機、染色、機織りといった複雑な製造工程とともに、伝統技法の泥染めを行う川沿いの泥田や作業にいそしむ若者、背景の家屋など懐かしさを感じさせる風景を映し出した。 映像に父が映っていたという同市名瀬の碩むつ子さん(71)は「こんな機会はない。しっかり目に焼き付けた」と感動した様子。来場者の中には紬従事者も多く「屋外で機織りしている風景が新鮮」「職人の作業が手早く、楽しそう。まさに生業」といった声も聞かれた。 プロジェクトに携わる英国オックスフォード大学オールソウルカレッジ社会人類学博士研究員のシャーロット・リントン氏は「ハーリング氏の映像を奄美で上映できたことはプロジェクトにとっても、島民にとっても意義深い」と語った。