菊池雄星を「逃すわけにはいかなかった」アストロズの思惑 青木宣親を放出してWS制覇した2017年と似ている?
この夏、ヒューストン・アストロズはふたりの左投手を手に入れた。トロント・ブルージェイズから菊池雄星(33歳)を獲得し、ニューヨーク・ヤンキースからケイレブ・ファーガソン(28歳)を得た。 【写真】メキシカンリーグでプレーする元ベイスターズ・乙坂智の今 どちらが大きな補強であるかは、言うまでもない。菊池は先発投手、ファーガソンはリリーフ投手だ。 菊池との交換に、アストロズは若手3人をブルージェイズに譲った。ファーガソンの対価は、若手1人とインターナショナル・サイニング・ボーナス・プール(海外のアマチュア選手と交わす契約金の総額枠)の75万ドル(約1億1000万円)分だ。 先発投手1人と若手3人のトレードは、菊池が今シーズン初めてのケースではない。たとえば、菊池移籍の数日前にザック・エフリンがタンパベイ・レイズからボルチモア・オリオールズへ移ったトレードも、レイズが得たのは若手3人だ。 ただ、エフリンがFAになるのは来オフだ。オリオールズは来シーズンもエフリンを保有できる。しかし、菊池の場合は3年3600万ドル(2022年~2024年)の契約最終年なので、アストロズは今夏から数カ月しか保有できない。菊池は今オフのFA市場に出て、ブルージェイズやアストロズを含め、どの球団とも契約を交わすことができる。 また、人数だけで見返りの大きさを判断することはできないが、菊池と交換にアストロズからブルージェイズへ移った3人は、ノン・プロスペクトではない。全米注目のトップ・プロスペクトまではいかないものの、いずれもマイナーリーグに詳しいメディアの『ベースボール・アメリカ』が選定したアストロズの球団プロスペクト・トップ20に入っていた選手たちだ。 その順位は以下のとおり。先発投手のジェイク・ブロス(23歳)が2位、外野手のジョーイ・ローパーフィード(25歳)が5位、内野手のウィル・ワグナー(26歳)は19位だ。
【アストロズの先発ローテ事情は?】 ブロスとローパーフィールドはそれぞれ、6月21日と4月30日にメジャーデビューしている。早ければ来シーズンにも、ローテーションと外野の一角を占める可能性もある。ワグナーもすでにAAAまで上がってきている。ちなみに、ワグナーの父はアストロズなどで通算422セーブを挙げたビリー・ワグナーだ。 未来の原石よりも台頭間近の選手を交換要員に選んだのは、ブルージェイズの意向だと思われる。菊池をはじめブルージェイズがこの夏に放出した選手の多くは、今オフにFAとなる。ただ、来オフにFAのブラディミール・ゲレーロJr.(25歳)とボー・ビシェット(26歳)は手放さなかった。この動きから察するに、ブルージェイズは数年を費やして再建を行なうのではなく、来シーズンの浮上を目指しているように見える。 一方、アストロズのゴールは、8年連続ポストシーズン進出と、2年ぶりのワールドシリーズ優勝だ。そのためには、先発投手の獲得が最優先課題だった。 本来なら、ローテーションに並んでいるはずの投手のうち、ホゼ・ウルキディとクリスチャン・ハビエルは、6月初旬に揃ってトミー・ジョン手術を受けて今シーズンを終えた。さらに、ルイス・ガルシア、ジャスティン・バーランダー、ランス・マッカラーズJr.も故障者リストに入っている。この3人のうち前2人は8月前半に復帰できそうだが、ガルシアはトミー・ジョン手術明けで、バーランダーは41歳。以前のような投球ができる保証はない。 ともに30歳のフランバー・バルデスとロネル・ブランコはローテーションの1~2番手を形成しているものの、あとのふたり、20代半ばのハンター・ブラウンとスペンサー・アリゲッティは安定感に欠ける。トレードで放出したブロスも、移籍前の先発3登板は防御率6.94だ。 アストロズは、先発投手だけでなく一塁手も欲しがっていた。大不振のホセ・アブレイユを6月半ばに解雇したが、アブレイユに代わって一塁を守っているジョン・シングルトンも結果を残しているとは言いがたい。