アマミノクロウサギ分布域拡大 マングース、ノネコ対策が効果 奄美大島・徳之島
奄美希少野生生物保護増殖検討会(座長・石井信夫東京女子大学名誉教授、委員6人)の会合が5日、奄美市名瀬のアマホームPLAZAであった。国の天然記念物アマミノクロウサギは奄美大島、徳之島両島で増加傾向で、分布域も拡大したとの報告があった。環境省は「マングースの防除事業やノネコ(野生化した猫)対策の効果が表れている」と評価し、今後新たな確認地点も含めてペットの適正飼養や交通事故防止について普及啓発を強化していくとした。 会合にはオンラインも含め関係者約50人が参加。環境省と関係機関が、保護増殖事業の対象となっている奄美希少種3種(アマミノクロウサギ、アマミヤマシギ、オオトラツグミ)の生息状況などについて報告した。 アマミノクロウサギは、奄美大島の瀬戸内町や宇検村、奄美市名瀬などで分布域の拡大が見られた。徳之島では犬田布岳周辺で新たに確認があり、関係者は今後南部への生息域拡大につながると期待した。一方、2023年の交通事故発生状況は奄美大島が147件で過去最多、徳之島は29件だった。24年は10月末時点で奄美大島97件、徳之島31件で、いずれも高い水準で推移している。 アマミヤマシギは奄美大島と徳之島の全体で見ると増加傾向にあったが、加計呂麻島と徳之島南部は引き続き低い水準のまま推移した。加計呂麻島ではセンサーカメラに犬や猫が映っており、捕食などの影響が懸念される。徳之島南部は北部・中部に比べ森林域が小さいなど環境の違いが原因と考えられるという。 かつてマングースの生息密度が高かった奄美大島の名瀬近郊では、ノネコ対策も進んだことから猫の確認頻度も減少。アマミハナサキガエルやアマミトゲネズミなどの増加も確認された。一方、回復傾向が見られないエリアもあり、原因究明のためのデータ収集が課題に挙げられた。 24年3月のオオトラツグミさえずり調査による確認数は過去最多となった。生息地域は奄美大島の笠利地区を除くほぼ全域に広がり、生息状況は良好と報告された。25年の一斉調査は3月16日の開催を予定している。 24年度を初年度とする奄美希少種3種の保護増殖事業10カ年実施計画は、生息数の増加や分布域の拡大状況によって10年を待たず事業終了も見据えており、各種の評価基準について委員らが意見を交わした。このほか、12月22日にオープン予定の徳之島世界遺産センターの紹介もあった。