<ラグビー>新生ジャパンのフルモデルチェンジは成功するのか?
防御は試合を追うごとに改善された。ロックの谷田部洸太郎によれば「最初は集まったばかりで…という部分もありましたが試合を重ねるごとにいい感じでコミュニケーションが取れるようになった」とのことだ。 接点から数えて3人目にあたる選手が、相手攻撃の起点を外側から囲い込むようにせり上がる。「かぶる」と呼ばれる動作でプレッシャーをかけ、ぶつかり合いでは足元とボールの出どころへ2人がかりでのタックルを繰り出す。平易にパスを繋いでゆくジョージア代表、ウェールズ代表には、しばしこのシステムで封鎖することもできた。 課題が明らかになったのは、フィジー代表戦。反則による退場者を出す相手に一時は29点差もつけられた。アンストラクチャーの起点となるキックが、相手の攻撃力を引き出してしまう。過去2戦でも散見されたそんな傾向を、大砲の揃うフィジー代表を前にしても続けてしまった。 福岡は「アタックの時のキックでは、(捕球する相手へ)競りに行って、少しでもクリーンキャッチをさせないことが必要」と反省した。 前半22分には、一時退場処分で1人少ない相手に、敵陣22メートル線上から一気にトライラインまで攻め切られた。ジャパンからみて右側の狭い区画で数的優位を作られ、残された防御役が相手を止めようと突撃。しかし、その背後などでシンプルにパスを繋がれ、スコアを3―14とされた。 本来はできるはずのない数的優位を作られた場面について、田邉は「あそこは、その反対側のラックで人数をかけすぎて、外がド余り(数的優位)になったのだと思う」と分析する。しかし、この場面を引き起こした真の理由は、別のところにあると言った。 満足できる内容だったウェールズ代表戦の次の試合を前に、ウェールズ代表戦前と同質の準備ができていたのかどうか…。アシスタントコーチとして反省していた。 「『真に評価されるべきは、ビッグゲームの次の試合でのパフォーマンス』だということを、コーチ陣、リーダー陣が、(キャリアの浅い選手へ)口を酸っぱくして言うべきだったかな、と」 さらに大きな宿題は「グラウンド外」の問題点だ。今回は国内のトップリーグのスケジュールもあり、アルゼンチン代表との初戦までの準備期間は、約1週間のみだった。好試合もあったために消されそうな記憶だが、今回、指揮官の当初望んでいた選手が揃っていないのも事実だ。複数のキーマン候補が日本協会との話し合いなどを経て、辞退や落選に至っていたのだ。その背景に何があったのかは、改めて精査されるべきだ。 スーパーラグビーの日本チームであるサンウルブズは、今度のジャパンの遠征にも帯同したフィロ・ティアティア新ヘッドコーチを筆頭にスコッドを編成中。初年度に発生した選手の体調管理の問題を改善し、いまのジャパンとほぼ同じ戦術とメンバー構成のもと、連携を図られたい。 ジョセフら首脳陣にとっては、今回が初めてのテストマッチツアーだった。選手らは、戦術理解のブラッシュアップやプレーの一貫性の大切さを再確認。2019年のワールドカップ日本大会に向けた物語の序章としては、上々かもしれなかった。立川とともにオン・ザ・ピッチの先頭に立つ堀江は、こうまとめた。 「自分たちのやりたいラグビーをどれだけ染み込ませるかという部分では、毎試合、毎試合、いい準備ができ、実行に移せた。姿勢と、スマートさがあったかなと思う。あとは、プレーの精度を上げて、それぞれがより役割を明確に(把握)してゆけばもっとよくなる」 現場サイドは、いまの体制下でもっと成長しうると強調する。目標は、日本大会での決勝トーナメント進出だろう。現チームの連帯感を結果に直結させるうえでも、日本ラグビー界全体のレビューやチェックの質が問われる。 (文責・向風見也/ラグビーライター)