<ラグビー>新生ジャパンのフルモデルチェンジは成功するのか?
フルモデルチェンジのさまは、ラグビースタイルの構築にも表れた。 ハイランダーズ時代にもジョセフと手を組んできたトニー・ブラウンアタックコーチが、主に攻撃面のプランを整理していたのだ。アンストラクチャー(キックの蹴り合いの直後など、互いの組織が整備されていない状態)の状態から、組織的な攻めを仕掛けにかかる。 採用したのは、グラウンドの中央、左右などに満遍なく選手の束を並べる「ポッド」という戦術。エリアや状況ごとに、誰がどの位置に立つべきかが明確化された。35歳で初めて日本代表入りした左プロップの仲谷聖史も、ツアー中に「(左右の)15メートル線の間で自分の仕事をする」と証言した。 イングランド大会までのジャパンは、接点や司令塔の周囲に複数人の層を作る「シェイプ」という戦術を使っていた。しかし、現場サイドはフルモデルチェンジへ前向きに取り組んでいた。思えば、今季からスーパーラグビーに参戦した日本のサンウルブズも、マーク・ハメット前ヘッドコーチのもと現ジャパンと似た人員配列を用いていた。サンウルブズにいた代表選手が「サンウルブズに似ていると思います」と口々に話すなど、変化へのアレルギーは大きくなかったようだ。 プランに紐づけされたスキルも、根気強く醸成された。攻防の起点にキックを使うことから、後方から攻め上がるフルバックとウイングは正確にハイボールを処理しなくてはならない。そのため全体練習後、田邉コーチが捕球の特別メニューを実施していた。 変革への意欲が奏功したのは、欧州に渡ってからか。 理想の攻めが見られた一例は、ウェールズ代表戦の後半14分だ。 敵陣22メートルエリアでターンオーバーを決めると、左へ、右へとボールを動かしながらゲインラインを突破する。最後は攻撃ラインの先頭に立つフッカーの堀江が、その背後で待つランナーのさらに向こう側へ、角度をつけてパス。スタンドオフの田村優、アウトサイドセンターのティモシー・ラファエレ、アウトサイドフランカーのマルジーン・イラウアと順にバトンを渡し、ウイングの福岡堅樹が楕円球をインゴールへたたきつける。田村のゴールも決まってスコアを20―24とし、7万人の観衆を沸かせた。 ジョージア代表戦でも堀江のパスからの展開でトライを取っていた福岡自身は、こう説明した。 「外でトライが取れるのはいい傾向なので、継続していきたいと思います。全体の流れの中で、あのアタックがある(用意されている)。それが、上手く活きた」