『ガス人間第一号』がリブートされる衝撃 ヨン・サンホ×片山慎三監督なら間違いなし!
Netflixと東宝が初タッグを組む完全オリジナルストーリーの実写シリーズとして、かの伝説的傑作『ガス人間第一号』(1960年)がリブートされることが決定した。しかも、エグゼクティブプロデューサー・脚本に『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016年)のヨン・サンホ、監督に『さがす』(2021年)の片山慎三、さらにメインキャストには小栗旬と蒼井優という豪華メンバーが実現。原典を知る人もそうでない人も、思わず身を乗り出さずにはいられない刺激的企画だ。 【写真】オリジナル作となる『ガス人間第一号』 1960年に公開された東宝特撮映画『ガス人間第一号』は、『美女と液体人間』(1958年)『電送人間』(1960年)に続く「変身人間シリーズ」の第3弾として制作された。監督を『ゴジラ』シリーズでおなじみの本多猪四郎が務め、特技監督を円谷英二が担当。タイトルどおり、自らの肉体を気体化する能力を得た人間が、その力を使って銀行強盗を繰り返すという奇想天外な犯罪劇が主軸となる。名優・土屋嘉男がふてぶてしく演じるガス人間の不気味な変身シーンや、大胆かつ奇抜な犯行シーンをアイデアたっぷりに見せる円谷特撮はもちろん、犯人を追う警察との丁々発止の攻防もサスペンスフルな面白さに満ちている。 だが、この作品の魅力はなんと言っても、ガス人間となった主人公と、彼が思いを寄せる日本舞踊の家元との悲劇的なラブストーリーの部分にある。なぜガス人間が多くの人々を犠牲にしてまで凶行を重ね、大金を奪い続けるのか、その理由はあまりにも切ない。ヒロインを演じた八千草薫の絶世の美しさとともに、娯楽映画の基本的エッセンスである「美女と犯罪」を見事に特撮SFジャンルと融合させた傑作として、いまだにファンの心を捉えて離さない不朽の名作なのだ。東宝特撮映画史においても異色の輝きを放ち続ける本作は、業界内外に熱烈なファンも多く、2009年には後藤ひろひと脚色・演出により舞台化もされた。 そんなバイブル的作品を、日韓のトップクリエイターたちが結集し、現代日本を舞台にした最新VFX満載のオリジナルストーリーとして再起動すると聞いて、血が騒がないわけがない。2018年に東宝のプロデューサーから「変身人間シリーズ」のリブート企画を持ち掛けられ、その中から『ガス人間第一号』に目をつけたヨン・サンホの慧眼にも拍手を送りたいが、企画構想から6年、脚本開発に3年をかけたという入魂のプロジェクトであると聞けば、オリジナル原理主義者のファンの懸念もいくらか払拭されるだろう。 日本の生んだ漫画・映画・アニメなどのサブカルチャーを愛し、岩明均の傑作漫画を独自に脚色したNetflixシリーズ『寄生獣 ―ザ・グレイ―』(2024年)も実現したヨン・サンホの脚本・プロデュースとなれば、もちろん一筋縄ではいかない仕上がりになるはずだ。 今回発表された片山慎三監督との対談では、片山監督ともども「SFでありスリラーでもあるが、その本質はヒューマンストーリーだと思う」とコメントしており(※)、つまり作品の魅力をしっかりと捉えていることが分かる。それでいて片山監督は「現代の日本社会が持つ、力の強い者と弱い者の関係性といった社会情勢もきちんと描いていきたい」とも語り、現代を撃つ生々しいドラマとしての強度も期待できる。オリジナル版のハートである悲恋の切なさは、そして一風変わったSF犯罪スリラーとしての魅力は、Netflixシリーズ『ガス人間』でどのようなかたちに変化するのか。小栗旬、蒼井優が新たに演じる役柄を含め、想像は膨らむばかりだ。 参照 ※ https://realsound.jp/movie/2024/08/post-1742801.html
岡本敦史