騒然!中国がCCTV「台湾侵攻」番組で伝えた想定展開、台湾は「Xデー」ドラマを制作
もしも中国軍が台湾に侵攻したら――。いま中台双方でTV番組が制作される意味。台湾ドラマには日本の有名俳優も出演する
もしも中国軍が台湾侵攻を開始したら?──想定される展開をリアルに伝えるドキュメンタリーシリーズが波紋を広げている。 【動画】高橋一生も出演する『零日攻撃ZERO DAY』予告編、現地報道 問題の番組は、中国の国営テレビ局・中国中央電視台(CCTV)が放映した『淬火(ツイ・フオ)』だ。 最終回の第6集(エピソード6)は、習近平(シー・チンピン)主席の命令への絶対服従を誓った兵士たちが一糸乱れぬ連携で高度な実動訓練をこなす模様を伝えている。空母からの戦闘機の発進やミサイル発射、電子戦の演習など、台湾の防衛線を突破する統合作戦をシミュレートし、中国軍の機動力の高さを誇示する内容だ。 前半には若い兵士が引き裂かれた祖国の現状を嘆き、統一の悲願を自分たちの手で実現すると誓う場面もある。 台湾島上陸作戦のシミュレーションでは、台湾軍の兵士役が空挺部隊を乗せた中国軍のヘリコプターを携帯式地対空ミサイルで迎え撃つ。 「戦場では携帯式の対空兵器が広く使われる。わが軍はその脅威に備えた訓練を行っている」と、番組の中で中国軍の将校が解説する。 中国は近年、台湾指導部に圧力をかけるべく東シナ海の周辺海域で軍事活動を活発化させている。数十機もの中国軍機が台湾海峡のほぼ中央に引かれた事実上の境界線「中間線」を越えて台湾の防空識別圏に進入するなど、挑発行為は先鋭化するばかりだ。 今年5月20日に台湾の新総統に就任した頼清徳(ライ・チントー)は「現状維持による平和と安定」を目指すと述べているが、中国は頼を「独立派」と見なし、警戒を強めている。 「中国共産党は何かにつけて『一つの中国』をアピールしたがる」と、米シンクタンク「ジャーマン・マーシャルファンド」のインド太平洋事業部長を務めるボニー・グレーザーは言う。「台湾は中国の属国ではないと毅然として言い放ってきた人物が台湾総統に選ばれたとなると、なおさらだ」
「異様な緊張」を描く
ただ、中国の世論が台湾併合を望んでいるかは大いに疑問だと、グレーザーは指摘する。「一般の人々の関心事は台湾問題ではなく、経済状況や若年層の失業など生活に直結する問題だろう」 一方で台湾でも、中国の軍事侵攻をテーマにした番組の制作が進んでいる。こちらはドキュメンタリーではなくドラマで、タイトルは『零日攻撃ZERO DAY』。放映開始は来年に予定されている。 今年7月に公開された予告編は、中国軍による海上封鎖や銀行の取り付け騒ぎ、前線の金門島からの台湾軍の退却など、中国軍の上陸を目前に控えた台湾社会の異様な緊張状態を描いている。 国共内戦で毛沢東率いる共産党に敗れた国民党政府が台湾に逃れたのは1949年。現在では台湾と正式に国交を結んでいる国は12カ国にすぎない。それでも、1980年代末以降民主化が進み、選挙で選ばれた政府と軍隊、独自通貨を持つ台湾は多くの国々と経済や文化で交流を深めてきた。 だが中国は一貫して台湾を自国の一部と見なし、「祖国統一」のためには武力行使も辞さない姿勢を示している。 脅威が高まるなか、台湾も軍備を増強。中台双方のTV番組が警告するように東シナ海の火薬庫から目が離せない。 マイカ・マッカートニー