うっかり発言は努力の証し――マカロニえんぴつ・はっとりが考える「言葉選び」について
人とのコミュニケーションは「俺ってどんな人?」という確認作業だと思う
――そもそも誰ともコミュニケーションをとらなければ辛辣なコメントをもらうこともなく、傷つかないで済むという考えもあるかもしれません。はっとりさんは、「他者とのコミュニケーション」について、どのように考えていますか? はっとり: どうしても他者と共存しているのが人間だと思いますから、やっぱりコミュニケーションは欠かせないことなのではないでしょうか。「そろそろ誰かに会わなきゃ!」と思って人と会っているわけではないですよね。他者とコミュニケーションをとることは、「自分を知る」ということだと思うんです。だから、ものすごく大事なことだと考えています。 他者と話すことによって、自分のいいところも悪いところもあぶり出されるというか、他者の中に本当の自分の姿が隠れているように思うんです。自分がいくら理想を思い描いて「そうありたい」と思って生きていても、相手の中で違うように映っていたら、その人の中での自分に対する印象は、自分が思い描いていた理想像とは違うものになっています。だから、人とコミュニケーションすることは、「俺ってどんな人?」という確認作業だと思うんですよね。人との関わりの中でだんだんと自分自身を自覚していくというか、そういうことなのではないでしょうかね。
「こういうことが言いたかったんだな。次は頑張れ!」みたいなほうがいい
――はっとりさんは、マカロニえんぴつのほとんどの楽曲の作詞を担当されています。作詞をする上でも、SNSを利用する上でも、「言葉を選ぶ」ということは大事なポイントなのかと思います。「言葉を選ぶ」ということについて、どのように考えていますか? はっとり: 「言葉」は、選び続けたほうがいいと思っています。回りくどい言い方をしてこそというか、それが日本の文化だし、僕は美しいことだと思うんです。だけど、選ぶにしても後ろ向きな選び方、本当はこう言いたいけど「当たり障りない言い方にしよう」ではなく、リスクを伴うかもしれないけれど、うまい言葉の選び方をして「クリティカルヒットさせてやろう」という前向きな選び方をしていきたいなと思いますね。 最近はコンプライアンスなど、いろいろ面倒なことも多いので、僕自身も思わず後ろ向きな言葉の選び方をしてしまうんです。でも、取り繕う言葉の選び方をしていては、人とは深いところで関わり合えない。だから、うっかり発言ってすごくいいなと思っています。うっかり漏れた言葉が本音なら、みんな口をうっかり滑らせればいいと思うんですよ。SNSでも、失言をすごく袋だたきにしてしまう風潮がありますよね。だけど、その失言は「クリティカルヒット」を狙って言葉を選び間違えた結果じゃないですか。伝えようとした結果、誤解を招いてしてしまったという…。でも、それは努力の証しだと思うんです。 保守的に身を守るのではなく、失敗して失言してしまっても、「こういうことが言いたかったんだな。次は頑張れ!」みたいなほうがいい。昔はテレビとかでも、失言ばっかりだったように思いますけどね。もうちょっと失言を許してあげてもいいのではないかなと思っています。 --- マカロニえんぴつ 2012年、はっとり(Vo/Gt)を中心に結成された、メンバー全員音大出身の次世代ロックバンド。話題となったTBS系「王様のブランチ」のテーマソングをはじめ、アニメやCMなどタイアップ曲は多数。7月中旬に横浜アリーナで開催される「J-WAVE LIVE 2021」に出演予定。 (この動画記事は、J-WAVEとYahoo! JAPANが共同で制作しました)