機関投資家の暗号資産に対する関心動向──フィデリティの年次調査から
金融大手フィデリティ(Fidelity)の暗号資産(仮想通貨)に特化した機関投資家向けビジネス部門「フィデリティ・デジタル・アセッツ(Fidelity Digital Assets)」は2019年以降、「Institutional Investor Digital Assets Study(機関投資家デジタル資産調査)」と呼ばれる調査を発表し、世界中の機関投資家の暗号資産投資に対するセンチメントと普及のトレンドを測定している。 2023年の調査では、激動の2022年を背景に、機関投資家の暗号資産に対する見通しは総じて堅調だが、依然としてまちまちであることが示されている。
ネガティブなセンチメントを反映するトレンド
ただし、調査期間は2023年5月30日~10月6日までで、米証券取引委員会(SEC)がビットコインETF(上場投資信託)を承認するとの期待から、ビットコイン(BTC)が2万8000ドル付近から4万2300ドルまで上昇した年末の重要な時期を含んでいないことに注意する必要がある。 暗号資産の時価総額が2兆5000億ドル(約398兆円、1ドル159円換算)を超え、ビットコインが7万4000ドル近くまで上昇、SECがビットコイン現物ETFを承認し、まもなくイーサリアム現物ETFも承認するとみられることを受けて、2024年の年明け以降、認識は大きく変化したと考えられる。
2024年の注目点
デジタル資産の歴史上、間違いなく最も大きな出来事は、この調査が実施された後に起きた。すなわち、規制の不確実性を減らし、ひいては価格ボラティリティを減らし、投資家の投資の選択肢を改善するであろうアクション、つまりビットコインETFのローンチだ。
では、SECがイーサリアム現物ETFを承認すれば、機関投資家の規制に対する懸念は緩和されるだろうか?
デジタル資産市場は早期普及からマスアダプションへと移行し始めている。2023年から2024年初頭にかけて、業界のリーダーシップ、プロダクト開発、受託者のコミットメントにおける大きな変化が暗号資産の世界を席巻し、暗号資産への機関投資家の新たな一連のオンランプが可能になった。 この変化が機関投資家の資産アロケーションの基盤に浸透するには時間がかかるかもしれないが、SECによる承認後、ビットコインETFが機関投資家の間に急速に広まったことは、機関投資家の暗号資産への関心が高まっていることを示しているだろう。