「ぼんでんが終われば春が来る」長い冬に力強く終わりを告げる横手雪まつり
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みちのくの五大雪まつりの一つ、秋田県横手市の「横手かまくら」。その歴史はおよそ450年。毎年、小正月の2月15日、16日に行われている。 この「かまくら」はよく知っていたが、意外と知らなかったここ横手の「ぼんでん(梵天)」。横手の雪まつりはこの二つの行事が一緒になって行われる。だが、ここのぼんでんは他に類を見ない大きさと豪華な頭飾りに特徴がある。「かまくら」とは雰囲気があまりに対照的な行事に驚いてしまった。 翌17日、旭岡山神社梵天奉納祭を追ってみた。朝、ほら貝の音とともに「ジョヤサ、ジョヤサ」の掛け声で若衆がぼんでんを担いで集まり始めた。花火の合図とともにおよそ3キロメートル先の旭岡山神社を目指す。神輿のような恵比寿俵を先頭に、子供達が担ぐ小若ぼんでん、男衆の本ぼんでんと続く。より早く奉納すればそのご利益も大きいようで、皆先陣を競って神社神殿を目指す。神社山門では、先に入った方が後から来たぼんでんを通すまいと激しく押し合う。 山門を通り抜けても神殿はまだ先だ。ここから標高差105メートル、登拝道650メートルの神殿を目指す。ただ歩いて登るだけでも大変なこの坂道を、男衆は「ジョヤサ、ジョヤサ」の掛け声勇ましく登っていく。 神殿が近づくと、巨大なぼんでんの先を倒して竿を抱え込む。そこから神殿を突き刺すかのごとく突っ込んでいく。それに対して、中に入らせまいとする若衆で激しいもみ合いが起こる。神殿の中はレンズが曇ってしまうほどの熱気だ。その様相は時に恐怖を感じるぐらいで、近くで撮影していた私も弾き飛ばされてしまった。
ぼんでんの由来も諸説あり、秋田県民俗語彙事典によれば、仏寺の施餓鬼供養の際の幣束からとする仏事幣束説、単なる棒手から由来する棒手説、また、ぼんでんの形状から原始宗教のシンボルからとする説などある。特に男性のシンボルとした祭りは全国にもいくつか見受けられるが、ここ横手の梵天奉納祭は勇ましく荒々しい。出発前の景気づけに、そして奉納後の感謝、慰労とお酒を酌み交わし、女性の入る隙がないこの男衆の祭りは、米どころ秋田ならでは、かもしれない。 ここ横手では「ぼんでんが終われば春が来る」と言われている。今年の奉納祭はまさにそんな天候になっていった。奉納が終わる頃には小雨が降り出し、市内のかまくらも心なしか小さくなったように見えた。 (2017年2月撮影)