離島や山間部のドローン活用、住民手探り 空に活路の物流企業も
離島や山間部のサービス拡充、災害対応の強化に向け、住民参加型のドローン活用が手探りで進んでいる。トラック運転手の輸送力不足が懸念される「2024年問題」に直面する中、空に活路を見いだそうとする物流企業の動きも出ている。(共同通信=加藤杏奈) 「ドローンを手足のように使いたい」。佐賀県唐津市の離島、神集島(かしわじま)で住民が結成したドローン隊の隊長高崎宣志(たかさき・のぶゆき)さん(40)は力を込める。隊員は講習を受けた10~50代の13人で構成。2023年度に国土交通省の実証調査に採択され、九州電力や県の支援を受けたのを機に島民主体の運営が始まった。 現在は島内の撮影程度にとどまるが、観光利用や定置網点検のほか、災害時の行方不明者捜索を想定する。島の人口は約300人で高齢者が多い。県の担当者は「やる気が高い若い人が挑戦してくれている」と語る。 広島県神石高原町では2018年の西日本豪雨を機に町民と連携。26人の町民が操縦の担い手となり、土砂災害や火災発生の際に活用してきた。ドローンは雨風に弱いが、機動性が魅力だ。町の担当者は「維持費用はかかるが、災害はいつ起きるか分からない。備えは必要だ」と強調する。
ただ、ドローン利用のハードルは高い。熊本県上天草市の離島、湯島では2020年度に九州側と島を往来する実験を行ったが「採算性を考えるとビジネスとして成立しづらい」と事業化を留保した。 東京・八丈島でも電波状況や島特有の強風の制約により実証実験止まりとなった。都は「実装するには今の技術では難しい」と説明する。 ドローン普及の後押しを目的に国交省は2023年12月、一定の条件で地上の補助者や看板を設置せずに過疎地の上空を飛ばせる「レベル3.5」の飛行制度を新設した。人口減少と高齢化が進展する地方は人員確保もままならないためだ。 物流ドローンの新興企業、ネクストデリバリー(山梨県小菅村)は、陸上輸送とドローンを組み合わせて配送を効率化するサービスを北海道や石川、徳島の8道県で手がける。新聞や食品など幅広い日用品を運ぶ。レベル3.5は運用の負荷とコストを低減できるといい、担当者は「まずはニーズが高い過疎地で進められたらいい」と話している。