『海に眠るダイヤモンド』一人二役の神木隆之介、“別人ぶり”のうまさに驚き ミステリー要素にも引き込まれた初回
■「いづみさんは、誰の現代の姿?」ミステリー要素を含んでいるのもマル
そもそも2つの時代を描き、多くの登場人物や歴史的な情報もある端島を舞台に置きながら、すっと物語が入ってくるのがすごい。そして初のひとり二役となった神木の巧(うま)さ。 希望や活気あふれ、しかし死や差別、産業の転換の足音も実は近くに聞こえはじめている端島で、故郷を愛し、青春に揺れる鉄平と、人ごみのなかでも孤独に満ちた東京に住み、どこか閉塞感漂う現代で夢も希望も誇りもなく生きる玲央。 神木の演技力は、かねて皆の知るところだが、今回、主人公として、それぞれの異なる時代に、何度もスイッチして登場するという非常に難しい挑戦をしている。これが声質からまったく違う別人になっていて、本当に驚いた。特に玲央の声は本気で「え、これ誰がしゃべっているの?」となった。それも無理に出している感じがまったくしない。 連ドラとしては、「いづみさんは、誰の現代の姿なの?」「玲央は鉄平とどんなつながりがあるの?」といったミステリー要素を含んでいるのも、エンタメとして非常に効いている。 同時に、高度経済成長期の昭和と、現代の2つの時代を描くというが、なぜ2024年ではなく、2018年なのか。この数年で、人との距離感や価値観、経済状況も、また大きく変わった。 「人生、変えたくないか? “ここ”から変えたくないか」。 この言葉は、1955年から、2018年から、2024年の今にも投げかけられているのかもしれない。ただ、ここから変えていくという希望と同時に、石炭業に未来がないことも、私たちは知っており、冒頭のいづみのモノローグにも悲しさが漂った。これからさまざまに心を揺さぶってくれるに違いない本作だが、すでに初回からつかまれている。(文:望月ふみ)