国士舘 歓喜の招待状 「昨春の雪辱果たす」 /東京
<センバツ高校野球> 第92回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高等学校野球連盟主催)の出場校が24日発表され、都内からは国士舘(世田谷区)が2年連続10回目の出場を決めた。昨年に続いて春の「招待状」を受け取った選手らは喜びをかみしめ、「まず甲子園で1勝」と初戦で敗退した昨春の雪辱を果たす気持ちを新たにした。センバツは3月19日に阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で開幕し、32校が熱戦を繰り広げる。【川村咲平、南茂芽育、五十嵐朋子】 午後3時10分。報道陣が詰めかけた校長室で電話が鳴った。固唾(かたず)をのんで見守る関係者たち。出場校に選出されたとの連絡に、岩渕公一校長は「喜んで受けさせていただきます」と了承した。 岩渕校長は早速グラウンドへ。吉報を心待ちにしていた野球部員たちに出場決定を報告して「全員が一丸となり、学校の名誉をかけて頑張ってください」と激励した。緊張気味だった部員の表情が緩み、鎌田州真主将(2年)が「全員で練習し、堂々と開幕を迎えたい」と奮闘を誓った。 部員たちはこの日が誕生日という永田昌弘監督(62)と鎌田主将を胴上げし、記念撮影ではガッツポーズで喜びを爆発させた。 今年のチームは「昨年に比べて打撃力が高く、どこからでも得点の好機が生まれる」(鎌田主将)という。昨秋の都大会は鎌田主将、黒沢孟朗選手(2年)ら主軸のバットが湿りがちとなる中、1年生ながら3番に座る清水武蔵選手らが奮起し、好機にたたみかける打撃力を発揮した。 投げては主戦右腕の中西健登投手(2年)は準決勝、決勝と2試合連続で完封勝利を飾り、脚光を浴びた。永田監督は「期待以上に成長してくれた」と、うれしい誤算だったことを素直に喜ぶ。 投打がかみ合い、堂々の都ナンバーワンとなって、センバツ切符を引き寄せた。 興奮冷めやらぬまま午後4時過ぎに始まった記者会見。永田監督は、昨年のセンバツ初戦敗退に言及し「繰り返さないように頑張ります」と述べると、鎌田主将は「最低でも(甲子園で)二つ勝ちたい」と意気込んだ。 ◇センバツで4強2回 OBにプロ野球選手も 1917年創立の私塾「国士舘」が母体となり、23年に前身の国士舘中等部が設立された。教育のモットーは「目先ではない真(まこと)の心づくり」。生徒自らが考え、伸長する環境づくりをしている。人間教育の一環として、カリキュラムに武道(柔道・剣道)と芸術(音楽・美術・書道)がある。「防災教育」も重要と考え、災害時の対応について実践的に学ぶ授業が行われている。 野球部は46年創部。グラウンドは多摩市の国士舘大内にある。センバツは初出場の91年と93年に4強、96年は8強に進んだ。OBに金子洋平さん(元日本ハム)ら。 柔道部も全国レベルで、石井慧選手や鈴木桂治選手ら五輪金メダリストを輩出している。互いの応援などで交流するサッカー部も強豪で、全国高校選手権にも出場している。書道部や吹奏楽部、美術部などの活動も盛ん。 ◇「家族で応援」 号外手に笑顔 豪徳寺駅前で配布 国士舘のセンバツ出場が伝えられた24日夕、同校の地元、世田谷区の小田急線豪徳寺駅前で毎日新聞の号外約300部が配布された。関係者が「センバツ出場校が決まりました」と声を上げると、通行人が次々と受け取った。 20年以上前からの高校野球ファンという近くの主婦、菊地智子さん(41)は「高校野球ならではの逆転劇やドラマが楽しみ。近くの学校が出るとうれしい。家族で応援します」と笑顔を浮かべていた。【五十嵐朋子】 ◇帝京は補欠校に 夏に向けて練習 昨年の秋季都高校野球大会で準優勝した帝京は、24日の選考委員会で関東・東京地区の最後の6枠目を花咲徳栄(埼玉)と争ったが、補欠校となり、2010年以来10年ぶりのセンバツ出場はかなわなかった。 板橋区の同校グラウンドで前田三夫監督(70)は「秋の都大会決勝で力を出せなかったので、難しいと思っていた。指導者として何とか選手たちを甲子園に導いてやりたかったが、残念だ。気持ちを切り替えてやるしかない。選手たちはこれを機に飛躍してもらいたい」と話した。選手たちは夏に向けて普段通り練習を続けていた。【井川諒太郎】 〔都内版〕