最近の自動車ディーラーは、顧客の利益を考えて販売しているのか? YouTube「マツダディーゼル動画」騒動から考える
ディーゼルエンジンのスス問題
筆者は、マツダから現在発売されているディーゼルエンジン「SKYACTIV-D」が、ロータリーエンジンなどの開発で高い評価を得ているエンジニアたちの努力の結晶であることを知っている。 「トルクフルで楽しいクルマ」 など、これまで所有したことのない顧客に所有欲をかき立てるような肯定的なコメントも多い。 しかし、エンジンについて調べてみると、ネガティブな情報がさまざまなところで目につく。その大半は、エンジン内部にたまるススに関するものだ。特にユーチューブなどでは、エンジンを分解して、その惨状を面白おかしく発信する投稿者までいる。 そもそも、現代のディーゼルエンジンは、エンジン内部に黒いススをため込んで大気中に放出しないという特性がある。ある程度たまったススを燃焼させて除去する 「DPF再生」 を行うが、通勤や買い物など「ちょい乗り」が多いクルマではDPF再生が完了する前にエンジンが停止してしまうため、ススがたまりやすくなる。 この状態が続けば、最悪の場合エンジンが停止する恐れがあるが、動画のクルマはまさにその一歩手前にあるのだろう。
顧客対応のプロ意識の欠如
前述のとおり、ディーゼルエンジンは長距離ドライブが多い顧客に向いている。もちろん、近距離しか走らなくても、長距離ドライブをしてDPF再生すれば問題ない。問題は、それを 「営業マンがきちんと顧客に説明しているかどうか」 である。営業マンは本来、顧客のニーズを理解し、それに合った解決策(商品)を提案することで、自らの価値を見いだすことができる。「このクルマが欲しい」という顧客に商品を売ることは悪いことではないが、 ・その顧客がクルマをどのように使っているのか ・本当にニーズに合っているのか を確認した上で、納得のいく説明をしているのかどうかが疑問なのだ。 営業マンが知識がないのであれば、勉強してきちんと説明できるようになればいいのだが、問題なのは、知識があっても顧客に伝えない営業マンがいることだ。 投稿された動画にもあるように、ススがたまってきたら掃除する必要がある。もちろん、ディーラーでも掃除はできるが、コストがかかる。自社工場でクリーニングすれば、工賃収入を得られる。したがって、将来の利益のために重要な事項を説明しないのは悪意があるといえる。 冒頭でも述べたように、顧客の多くはクルマのことをよく知らない。筆者は、ディーラーの営業マンが、プロ意識と誇りを持って顧客に対応することを期待している。
宇野源一(元自動車ディーラー)