連載『lit!』第125回:レディー・ガガ、ロゼ&ブルーノ・マーズ……大きなインパクトや衝撃もたらしたグローバルポップ5選
アディソン・レイ、グレイシー・エイブラムスの新作も
■Addison Rae「Aquamarine」 サブリナ・カーペンター、チャペル・ローン、チャーリー・XCXなど、女性ポップアーティストのブレイクスルーが相次ぐ2024年だが、その水面下で着々と存在感を発揮しているのが、チャーリー・XCX「Von dutch」のリミックスやA. G. Cook『Britpop』にも参加し、8月にリリースしたメジャーデビューシングル「Diet Pepsi」がスマッシュヒットを記録中のアディソン・レイだ。元々はTikTokやポッドキャストを起点にしてスターダムへの階段を登っていったという、いわゆるインフルエンサー的な立ち位置だったが、(2021年のデビューシングル発表後に生じた)未発表曲のリークを通してチャーリー・XCXやBurial、Arcaといったアーティストからの影響や繋がりが発見されたことによって、音楽面における熱狂的なファンベースを築いたという、特異なキャリアを持つアーティストである。 「Diet Pepsi」の時点で独特の浮遊感を纏ったサウンドでリスナーを魅了していたアディソンだが、同楽曲に続く新曲となる「Aquamarine」は、さらに自身の音楽的な趣味を全面に押し出したようにも感じられる、アンダーグラウンド色の強い仕上がりの名曲だ。近年のハイファイなムードとは一線を画すような、どこか煙がかったかのようなアトモスフェリックな音像&滑らかで退廃的な歌声と、タイトに引き締まったハウスミュージックのトラックの相性は抜群で、タバコを吸う姿があまりにもフォトジェニックなMVも相まって、そのユニークで強烈な存在感をポップシーンに対して見事に刻み込んでいる。 ■Gracie Abrams「That’s So True」 オリヴィア・ロドリゴやテイラー・スウィフトのツアーのオープニングアクトにも抜擢され、今年リリースされた2ndアルバム『The Secret of Us』がセールス・評価の両方で好成績を獲得するなど、ヒット街道を邁進中のシンガーソングライター、グレイシー・エイブラムス。10月18日にリリースされた同作のデラックス版の新曲として収録された「That’s So True」は、現在開催中のワールドツアーで初披露されて以来、長らくファンの間で音源化が待ち望まれていた名曲だ(音楽性は異なるが、楽曲の立ち位置的にはオリヴィア・ロドリゴ「obsessed」に近いと言えるだろう)。 『Red』以前のテイラー・スウィフトを彷彿とさせるような小気味よいカントリーポップのトラックに、リリックの隅々までキャッチーなメロディが敷き詰められた「That’s So True」は、まさにグレイシーらしい必殺のポップチューンであり、一聴するだけで多くの人々の耳を惹きつけることだろう(実際に、デラックス版で追加された楽曲にも関わらず、本楽曲は全英シングルチャートで自身最高となる3位を記録している)。元恋人との有害な関係性を回想し、さまざまな感情でぐちゃぐちゃになりながらも戦うことを決めるエモーショナルなリリックはオリヴィア・ロドリゴのスタイルを想起させるものでもあり、まさにオリヴィアやテイラーのようなポップシンガーソングライターの系譜の最先端に彼女がいるということを、本楽曲は力強く証明している。
ノイ村