パリオリンピック女子バスケ アメリカ戦を萩原美樹子が考察 次のドイツ戦のポイントは?
【死角のなかったアメリカの強さ】 では、なぜ、これだけの差がついてしまったのか? 日本は東京オリンピックが終わってからトム・ホーバスHCから恩塚HCに交代。2年前に開催されたワールドカップでは1勝4敗でグループステージ敗退となってしまいましたが、今年2月のオリンピック世界最終予選を勝ち抜き、チーム力は向上しました。だからこそ、恩塚HCも「アメリカを破って金メダル」という目標を掲げたはずです。 ところが、アメリカは本当に強かった。 193センチのエイジャ・ウィルソン(WNBA_ラスベガス・エーシズ)が24得点、191センチのブリアナ・スチュアート(WNBA_ニューヨーク・リバティ)が22得点と、日本はこのふたりを止めることができませんでした。それも決して高さだけではなく、彼女たちは走力もあり、先陣を切ってフロアを走る姿にアメリカの強さを見ました。 日本もディフェンス面で、決して対策をしていなかったわけではありません。東京オリンピックの決勝で悔しい思いをしたこともあり、恩塚HCは相手オフェンスの起点となる「パスの出所を抑える」ということを強調してきました。高さのあるインサイドにボールを入れられてしまったら、得点される確率が上がってしまうので、その前段階、パスを出す選手を抑えるという意図です。しかし、この試合ではそのプランがうまくいかず、ポイントガードのチェルシー・グレー(エーシズ)に13アシストを許してしまいました。起点を抑えることに関しては、次戦以降に大きな課題を残しました。 アメリカは3年前に東京オリンピックで金メダルを獲得した時よりも強くなっていますね。まさに、死角がない。いったい、このアメリカを倒せる国があるのだろうか? そう考えてしまうほどの強さです。 アメリカがチーム力の底上げが実現できたのは国内プロリーグ、WNBAの充実があるからだと思います。 数年前、関係者からは「アメリカの女子バスケ人気がすごい」と聞いてはいたのですが、今年の5月、ニューヨークにコーチ研修で訪れた時も、熱気だけでなく、選手たちのスキル、そしてバスケットボールの質が向上している印象を受けました。実際、今年は大学ナンバーワンを決めるNCAAトーナメント決勝では、テレビの視聴者数では、女子が男子を史上初めて上回るほどの人気を博しています。それだけ、試合内容も面白くなっています。 アメリカの進化を見るにつけ、日本がオリンピックで金メダルを目指すとしたら、国内のWリーグの質を充実させていかなければならない--と改めて実感しました。