だって、日本人だから…祖先の「酒に弱い」という突然変異が「日本人全体」に広まった、細胞核の中の「驚愕の生命ドラマ」
生物と「繰り返し」の切っても切れない関係
「同じことを何回も繰り返す」という事象には、どこか僕たち人間の関心を惹きつける要素が含まれているらしい。 そうした繰り返しは、たとえばチャールズ・チャップリン(1889~1977年)の映画『モダン・タイムス』で表現されたベルトコンベア労働者のようにコメディーや皮肉の対象になってきたし、少しずつ楽器が加わりながら同じモチーフが何度も繰り返されるモーリス・ラヴェル(1875~1937年)作曲のバレエ音楽『ボレロ』のように、芸術の対象にもなってきた。 そして、「繰り返し」という現象は、僕たち生物にとっても非常に重要なものとなっている。「生殖の繰り返し」によって生物は何十億年も生命をつなぎ、「細胞分裂の繰り返し」が僕たちのこの体をつくっているわけだから、それは当然である。 ウイルスもまた、細胞に感染して爆発的に増えるということを連綿と繰り返してきたからこそ、多様なウイルスの世界を構築することができたといえる。 DNAの世界にもまた、「繰り返し」が存在する。複製のことではない。それは、タンパク質の情報をコードしている「遺伝子」ではなく、むしろ「遺伝子以外の部分」に多く起こる「繰り返し」である。 「DNAの繰り返し」とは、数個程度の塩基配列が、何回も繰り返して存在していたり、数十塩基もの長さの塩基配列が、これも何回も繰り返して存在していたりするものを指している。こうした繰り返し配列について、掘り下げて見ていこう。 * * * * * DNAとはなんだろう 「ほぼ正確」に遺伝情報をコピーする巧妙なからくり 果たしてほんとうに〈生物の設計図〉か? DNAの見方が変わる、極上の生命科学ミステリー! 世代をつなぐための最重要物質でありながら、細胞の内外でダイナミックなふるまいを見せるDNA。果たして、生命にとってDNAとはなんなのか?
武村 政春(東京理科大学教授・巨大ウイルス学・分子生物学)
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