辻井伸行、「ハンマークラヴィーア」を含むドイツ・グラモフォン・デビュー・アルバムを発表
日本人ピアニストとしてはじめて、名門レーベル「ドイツ・グラモフォン」(DG)との専属契約を発表した辻井伸行が、DGからのデビュー・アルバム『ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第29番「ハンマークラヴィーア」、遥かなる恋人に』を11月29日(金)発表します。デジタル配信のほか、同じ日にCDも日本先行発売されます。日本盤CDは通常盤と辻井の最新映像を収録するDVDを同梱した初回・限定盤の2仕様での発売。海外でのフィジカル・リリースは2025年3月21日(金)を予定しています。 「ハンマークラヴィーア」は、辻井が2009年のヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクールで優勝した際に弾いた作品で、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全32曲中、演奏者にとってもっとも難しい作品の一つ。ベートーヴェンは個人的な苦悩と創作の停滞期にあった1817年から1818年にかけて作曲したこの曲は、完成とともに彼に新たな創作の活力をもたらしました。 「ハンマークラヴィーア」は、すべてのピアニストと同様、辻井にとっても弾きこなすのが大変な作品でした。辻井は「長尺な曲なので、集中力を維持するのが大変でした。レコーディングの準備には多くの時間を費やしました。とくに苦労したのは第3楽章です。音楽を自分のものにすることも含め、演奏すればするほどその深さを感じるようになりました。ベートーヴェンの境遇は、僕自身の経験と重なる部分があります。彼は聴力を失いながらも、このソナタのような素晴らしく、かつ難解な作品を残しました。だからこそ、私はベートーヴェンへの敬意を持って取り組んだのです」と語っています。 レコーディング2日目の終盤、辻井は翌朝の本収録に備えて「ハンマークラヴィーア」の長く、複雑な第3楽章の通し稽古を行ないました。さらにもう一度、プロデューサーの要望で、少し速いテンポで演奏。翌朝、レコーディングに臨んだ辻井の集中力は非常に高く、最初の演奏は、録音チームが感心する正確さと表現力、感情の深さに達していました。アルバムにはそのヴァージョンが収録される予定です。 もう一曲は、リストが1816年にソロ・ピアノのために編曲した連作歌曲集「遥かなる恋人に」。レコーディングに備え、辻井は6曲の詩を音楽同様深く掘り下げました。「詩に心打たれたのです。この表現力豊かな歌曲集と〈ハンマークラヴィーア〉は良い相乗効果を生むに違いないと思ったのです」と辻井は語っています。 DG社長のクレメンス・トラウトマンは「Nobu(辻井)は、コンサートの舞台に立つ時と同じ高い集中力と、ポジティブな心構えでセッションに臨みました」「対照的なふたつの作品を、それにふさわしいかたちで演奏したいという彼の強い意志と熱意は、チーム全員に感銘を与えました。彼のすばらしい解釈を世界中のリスナーにお届けできることを嬉しく思います」とアルバムの出来に自信をのぞかせています。 (c)Harald Hoffmann / Deutsche Grammophon