“女性が活躍する社会”の実現、その裏にある本質的な課題とは何か
「一億総活躍社会」の実現、特に女性が活躍する社会の創出は、政府の経済政策、いわゆる“アベノミクス”が掲げる重要なテーマのひとつですが、一方でその議論を巡っては、「保育所落ちた 日本死ね」のブログで加熱する保育所の待機児童問題や、出産・育児を希望する女性が企業を不当に解雇されるなど職場で不利益を被るパワーハラスメント問題など多くの課題が浮き彫りになっています。これら“女性の活躍”を巡る様々な課題が示唆する本質とは何なのでしょうか。経済紙『フォーブス ジャパン』の副編集長 兼 ウェブ編集長で経済ジャーナリストの谷本有香氏へのインタビューをもとに考えます。
あらゆる人生の選択肢が許容される社会が必要だ
谷本氏は、企業社会における女性の活躍をテーマに、パナソニックストア/レッツノート プレミアム エディションが主催したイベント『しなやかさの作り方 ~らしく生きる女性たちのストーリー~』において司会を務め、インタビューはその会場で行いました。 筆者は男性ですが、会場には企業で活躍している女性やこれから活躍したいという熱意のある女性が集まり、また壇上に上がったパネリストも全員女性という状況で、あることに気づきました。それは、そもそも「男性は」「女性は」と区別して議論していること自体が、社会の大きな課題なのではないかということです。 本来であれば、男女の性別に関係なく「働きたい」という熱意のある人が活躍でき、更には“一億総活躍”というスローガンに囚われず、「バリバリ働きたい」という選択も、「家庭を守りたい」という選択も、「趣味や学業を貫きたい」という選択も、あらゆる人生の選択肢が許容される社会が、本来目指すべき社会なのではないでしょうか。今回のインタビューでは、このような考えのもと谷本氏に意見を聞いています。
多様性を失った社会は、なぜ生まれてしまったのか
谷本氏も、女性が活躍する社会を考える上で「多様性」というキーワードが重要だと指摘したうえで、その「多様性」という言葉は女性に限らず、セクシャルマイノリティやハンディキャップを持った人など、あらゆる個性を持つ人を許容することを意味するとしています。多様性が求められる社会=多様性を失った社会はなぜ生まれてしまったのか。谷本氏は次のように語っています。 「これまでは、学校で“成績がいい”、あるいは会社で“営業成績がいい”という人が“優秀”だと評価されてきていますが、これは管理者やリーダーの怠慢なのではないかと思うのです。わかりやすい1つのものさしにすべての人を押し込んで評価すればラクですよね。しかし、それでは一人ひとりの良いところや強みは消されてしまう。そういう社会が、多様性を妨げてきたのではないかと思います。その人の強みや個性を重視する社会を生み出すことが、女性の活躍を実現するだけでなく日本の経済や社会を強くしていくのではないでしょうか」。 多くの人は、学校でいい成績をとって進学して、大学を卒業して新卒採用で企業に就職して、世のため企業のために働く。女性はその中で結婚したら子どもを授かり家庭に入る。敷かれたレールを進むような人生を送ることが“まっとうだ”と評価され、そのレールを降りて自分自身の信じる道を進もうとすると“道を外れた人生”というレッテルが張られる。周囲は表向きには応援してくれていても、心のどこかでは嘲笑さえしているかもしれない。結局は“世間体”を考えたら“右へならえ”の人生が一番安心だ。そのような社会が生まれてしまったことが、人から個性や信念を奪っていってしまったのかもしれません。