“女性が活躍する社会”の実現、その裏にある本質的な課題とは何か
多様性を認める社会に脱皮できるか否かが試されている
しかし、人生の選択肢はひとつではないことは明らかであり、女性が活躍する社会を考えることは、人生の選択肢を広げるという多様性の実現に向けた挑戦でもあります。谷本氏は、この多様性を許容する社会を実現するために、女性が活躍する社会を第1の課題に挙げたことは「意義のあることだ」と語っています。 「これがもし、“身障者の社会進出”という課題であれば、ハレーション(波紋)は起きにくい。なぜならば、社会の誰もがその重要性を理解できるからです。しかし、男性中心の企業社会で女性を活躍させるということは、感情的なハレーションが生まれます。女性が企業社会で活躍していく姿を目の当たりにすることで男性中心の社会が様々な感情を抱くことは、今後社会が多様性を許容していく上で重要な試金石になるのではないでしょうか」。
この課題を解決して働きたい女性が当たり前に活躍できる社会を実現した先には、人生の様々な選択肢を許容する社会が実現しているのかもしれません。そこで重要となるのは、自分自身がどのような生き方を選びたいのかという信念を持つことだと、谷本氏は提言します。 谷本氏は社会での活躍を目指す女性がどのように生きていくべきなのかという点について、「何にも囚われず、社会の観念に左右されず、自分自身の生き方、自分自身が何をしたいのかを大事にすること。自分自身に向き合い、心の中にある“原点”を忘れないことが大事なのではないでしょうか」と語っています。このことは女性に限らず、だれにとっても重要なことではないでしょうか。そして一人ひとりが持つ“自分自身の生き方”を認め合い、お互いに切磋琢磨していく社会が、多様性のある社会だといえるのかもしれません。 多様な考えを持った民族や文化が混ざり合うことで多様性を認め合いながら社会の形を作り上げてきた欧米諸国と比べ、日本は「男は社会のために働き、女は家を守る」という文化が長らく続いてきました。こうした国に根付いた文化や思想を転換させることは決して簡単なことではありません。しかし、「人生の選択肢はひとつではない」という当たり前のことを社会が許容し、誰もが自分自身の人生の選択を、自信をもってできる社会が生まれれば、誰もが活躍できる多様性を持った社会は現実のものになるのではないでしょうか。 (取材・執筆:井口 裕右/オフィス ライトフォーワン)