真の地方創生へ大胆な改革を:田坂広志の「深き思索、静かな気づき」
2つ目の大胆な改革案は──
第2は、新人の地方議会進出を支援すること。 地方創生が進まないのは、地域活性化の政策を決定・実行していく地方議会から新たな発想が出てこないことも一つの理由であるが、その解決のためには、地域の若い人材が議会で議席を持ち、地域活動の中心となって活躍することが不可欠である。 しかし、企業や官公庁で働く人材の議会進出を阻む要因として、法律的建前とは異なり、選挙に立候補するとき、長期休暇を取れず、しばしば自発的に辞職しなければならないという実態がある。そこで、これもフランスの制度に学び、企業や官公庁で働く人材も容易に立候補し、地方議会の議員を兼業できるように、さらなる法改正をすることである。 日本でも、こうした制度を導入するならば、多くの若い人材が政治に関心を持ち、地方議会に進出するようになり、新陳代謝が進むだろう。 第3は、住民の力を借りて行政を進めること。 地方創生のもう一つの壁は、地方自治体に予算や人員が足りないことであるが、その解決策として、かつて英国のブレア政権で実施された「第3の道」(The Third Way)がある。これは「公のサービスは、官が担わなくとも良い、民が担うのでも良い」という思想に基づき、地域に「社会起業家」(Social Entrepreneur)を育て、その力を借りて公的サービスを拡充し、地域振興を進めていくという政策である。 筆者が知事顧問を務める山梨県でも、こうした考えに基づき「賢明な政府:WISE」(With Initiatives of Social Entrepreneurs)というプロジェクトを始めたが、実は、日本全国で生まれている地方創生の成功事例の多くは、社会貢献の志を持った社会起業家的な人材の活躍によるものである。 真に地方創生を願うならば、石破新総理は、こうした抜本改革にも、大胆に着手すべきであろう。 田坂広志◎東京大学卒業。工学博士。米国バテル記念研究所研究員、日本総合研究所取締役を経て、現在、21世紀アカデメイア学長。多摩大学大学院名誉教授。世界経済フォーラム(ダボス会議)専門家会議元メンバー。元内閣官房参与。全国8500名の経営者が集う田坂塾塾長。著書は『人類の未来を語る』『教養を磨く』など100冊余。tasaka@hiroshitasaka.jp
田坂 広志