永住外国人の生活保護で最高裁が初判断 どんな判決だったのか
永住外国人の生活保護は継続へ
今回の最高裁判決で、生活保護法に基づく保護受給権を否定された永住外国人が生活保護を全く受給できなくなったとか、救済の可能性が全くなくなったかというと、そうではありません。特徴となる点は次のとおりです。 第1に、厚生労働省の従来からの運用を肯定したものであって、今後も従来の運用と変わらずに永住外国人について生活保護に準じた行政措置が行われるということです。 外国人に生活保護法に基づく受給権がないと最高裁判決が判示していても、従来から受給権がないことを前提として「行政措置」として生活保護が実施されてきていますから、その運用は変わりません。ですから、この判決で、いきなり永住外国人の生活保護が行われなくなるというわけではありません。 第2に、法的権利が否定されても、生活保護に準じた行政措置について、訴訟によって解決する余地があります。今回の最高裁判決は、外国人に生活保護法に基づく受給権があるか否かについて判断したもので、それ以外の部分は審理の対象ではないと判示しています。 生活保護は、原則として申請に基づいて開始されます(生活保護法第7条)。申請は、通常、福祉事務所に対して申請書を提出して保護を受給したいという意思表示するものです。 福岡高裁判決では、永住外国人のした生活保護申請について、「生活保護法に基づく申請」と「通知に基づく行政措置を求める申請 」の2つの種類の保護を求める意思表示が含まれているとして、前者の申請に基づく保護受給権を肯定し、後者の申請に基づく保護受給権を否定判断していました。 しかし、否定された「通知に基づく行政措置を求める申請」の部分が上告されていなかったので、今回の最高裁判決は、「生活保護法に基づく申請」のみ判断しました。だから、通知に基づく行政措置について訴訟による解決までが否定されたわけではないのです。 また、1981年の難民条約加入に伴う衆議院法務委員会でも、政府説明員は「最終的には裁判上の訴えの利益というものも認められております。最終的な保護の受給というものは、外国人に対しましても確保されるというふうに考えております。」と述べており、訴訟による解決を示唆しています。