実在の事件に影響を与えた“本当に怖い映画”(2)少年が母親をメッタ刺し…凶行のきっかけとなったホラー映画は
誰にでも人生に影響を及ぼした映画があるのではないだろうか。そんな作品に出会えたことは幸運だ。しかし、衝撃作には副作用があることを理解しておかなくてはならない。そこで今回は、世間に悪影響を与えた映画を5本セレクト。映画に感化されて起きた事件の内容とともに紹介する。第2回。(文・阿部早苗)
『スクリーム』(1996)
監督:ウェス・クレイヴン 脚本:ケヴィン・ウィリアムソン 出演:ネーヴ・キャンベル、コートニー・コックス、デヴィッド・アークエット、ロジャー・L・ジャクソン、ジェイミー・ケネディ、リーヴ・シュレイバー、マーリー・シェルトン 【作品内容】 高校生のケイシーが彼氏と共に謎のマスクをかぶった人物に惨殺される事件が発生する。そんな中、次に狙われたのは母親を一年前、何者かに殺害された女子高生のシドニー。彼女は自宅で怪しい電話を受け襲われる。 【注目ポイント】 メガホンをとったのは、映画『エルム街の悪夢』(1984)などで知られるホラー映画界の巨匠ウェス・クレイヴン。ファンの間で不動の人気を誇る本作は、連続殺人鬼「ゴーストフェイス」による恐怖を描いたシリーズ第1弾。制作費は約1,500万ドルと低予算でありながら世界興行収入は約1億7,300万ドルと、1990年代のホラー映画の中でも屈指の成功をおさめた作品でもある。 物語は、架空の街ウッズボローで起こる連続殺人事件を中心に展開する。高校生のシドニー・プレスコット(ネーヴ・キャンベル)を主軸に、マスクを被った殺人鬼「ゴーストフェイス」が彼女や友人たちを次々に襲撃する。と同時に、1年前に殺害されたシドニーの母親の事件との関係性も浮き彫りになり、“犯人は誰か?”というミステリー要素を巧みに盛り込んだ展開は、観る者の緊張をラストまで途切れさせることはない。 スプラッター映画の名作として愛される一方、本作は凄惨な殺人事件にインスパイアを与えたことでも知られている。俗に「スクリーム殺人事件」と呼ばれているその事件の犯人はなんと、16歳と14歳の少年2人。彼らは共謀して16歳の少年の母親を殺害。被害者の身体を45回も刺す…といった蛮行に及んだのだった。 しかし一体なぜこんなことが…。裁判が行われると、当然動機に注目が集まった。彼らは本作と続編の『スクリーム2』(1998)に感化されて犯行に及んだとあっけらかんと明らかにしたという。 また、この事件の1年後にも2人の少年が本作を観た後に刃物で人を襲う事件が発生。被害者は18回刺されながらも奇跡的に生還したが、改めて、社会に『スクリーム』の影響力の大きさを知らしめることになった。 (文・阿部早苗)
阿部早苗