今の株高はトランプ効果だけではない じつは持ち直していた世界の実体経済
NYダウ、日経平均が共に2万の大台に迫ってきました。足元の株価上昇について、一般的には「トランプ次期大統領の政策期待を背景に……」と説明されていますが、本当にそれだけで株価が上昇したのでしょうか。もちろん新政権の経済政策に対する期待があることは否定しませんが、最近の株価上昇の裏には大統領選の直前から明らかになりつつあった実体経済の持ち直しがあったと筆者はみています。(解説:第一生命経済研究所 主任エコノミスト 藤代宏一)
2016年前半の景気停滞は一時的? 世界的に経済は持ち直している
経済指標に目を向けると、グローバル製造業購買担当者指数(PMI)の改善基調が注目されます。この指標は企業に対して、実際の「生産」「受注」「雇用」「在庫」などが前月に比べて、どのように推移したかを「増加・不変・減少」で回答してもらい、それを数値化したものです。
グローバル製造業PMIとは、英マークイット社が、日米欧をはじめ主要国で毎月公表しているもので、一般的にこの指標が50を上回っていると、経済活動が活発化している目安とされており、その速報性の高さから多くの市場参加者に注目されています。 そのグローバル製造業PMIは、年前半に停滞した後に秋頃から緩やかに持ち直し、直近の値はこの2年程度で最も高い水準に位置しています。これは年前半の世界的な景気停滞が一時的であったことを市場参加者に印象付けています。先進国・新興国を問わずこの指標が改善していることは、文字通り“グローバル”に景気が持ち直していることを意味していますから、投資家の楽観姿勢が強まるのは自然なことと言えます。
日本の製造業も好調
続いて日本の経済指標に目を向けると、教科書どおりの景気回復のサインが示されています。注目すべきは「出荷・在庫バランス」です。 これは出荷と在庫の関係を基に、製造業の生産サイクルを判断するというもので、出荷の前年比伸び率から在庫の前年比伸び率を差し引いて算出したものです。出荷が増え、在庫が減っていれば、それは先々の生産・受注が増えることを意味します。そこで直近の出荷・在庫バランスに目を向けると、ここ数カ月はプラス圏で推移しており、出荷の伸びが在庫の伸びを上回っている様子が見て取れます。 これは在庫調整が一巡し、先行きの生産活動が活発化することを強く示唆しています。日本の製造業PMIを確認してみても、生産の先行指標として優れている「新規受注」が上向き基調に転じています。PMI新規受注は、9月まで8カ月連続で50を下回った後、直近は3カ月連続で50を上回っていますので、上述の出荷・在庫バランスの動きと整合的と言えます。