【税理士が教える】一見、仲良く見えるのに、「相続争い」が起きてしまう家族の特徴
親が相続対策しないまま亡くなると、残された家族や子どもは、膨大な手続きに苦労したり、争族に巻き込まれたり、相続税が払えなかったり…と、多大な迷惑をこうむります。本連載では、知識のない親御さんでも、ステップ式で5日で一通りの相続対策ができる『子どもに絶対、迷惑をかけたくない人のための たった5日で相続対策』(ダイヤモンド社刊)を出版した税理士の板倉京さんが、最低限やっておくべき相続対策のポイントを本書から抜粋して紹介していきます。 ● しっかり相続対策をしていても、揉める? 2か月前に夫を亡くした、佐藤まゆみさん(72歳 仮名)。夫の遺産をめぐって子どもたちの話し合いがつかず困っています。子どもは、長男・長女・次男の3人。長男と長女は結婚していて、子どもが2人ずついます。次男は独身です。 まゆみさんの夫はしっかり相続対策もしていました。子どもには平等に遺産を分けたいと遺言書を残し、節税対策になるからと4人の孫に毎年50万円ずつ生前贈与もしていたそうです。 ● 子どもに平等に分けたかったはずが…… 夫の遺産と、孫へ贈与した金額は以下の通りです。 【夫の主な遺産】 自宅マンション(時価1億円)・預貯金(約5000万円) 計1億5000万円 【孫への贈与】 長男の子 17歳(850万円) 15歳(750万円) 計1600万円 長女の子 16歳(800万円) 14歳(700万円) 計1500万円 夫の遺言書は、預金のうち3000万円を子ども3人で1000万円ずつ、残りは妻のまゆみさんにすべて相続させるという内容でした。しかし、その遺言書を前に、子どもたちが揉めてしまったと言います。 ● 誰にとっての平等か 「父さんは、きょうだいに平等に相続させたいと言っていたが、その通りだな」という長男の言葉に、次男が異議を唱えました。 「俺には、これが平等だなんて、まったく思えない」。 次男の言い分は以下の通り。 ①長男は、アメリカの大学院の留学費用(600万円)を父に出してもらっている ②長女は、家を買う時に500万円もらっている ③長男長女とも、孫への贈与をもらっている ④自分は何ももらっていない しかし長男は次男に「お前は結婚もせず気ままな生活だが、俺たちは結婚し子どもを育てている。孫への贈与も相続とは関係ない」と反論したといいます。 ● どちらの言い分も間違いではない このきょうだいの言い分をどう思いますか? どちらかが間違っていたり、欲張りだったりすると感じられますか? 私は、どちらの言い分も、わからなくもないと思います。特に、次男は、遺産額それ自体よりも、他のきょうだいと同じように扱ってもらえなかったことに傷ついたのではないかと心配です。子どもにとって相続は親からの最後のプレゼント。「兄さんや姉さんは生前にたくさんもらっていたのに、これはえこひいきだ」と感じてしまう。これは相続特有の感情、きょうだいへの嫉妬の感情です。 お父さんも、きょうだい平等にと考えていたのでしょうが、相続で平等を実現するのは難しいものです。結局、まゆみさんが中心となり、遺言書は採用せず、話し合いで財産を分けることになりました(遺言書は、基本的には、法定相続人全員の合意があれば、遺言書通りに分けなくてもいいのです)。 「うちの子たちは欲がないし、仲がいいから相続で揉めたりしない」という方がいますが、相続で揉める理由は、欲だけではないし、大人になったきょうだいは、親が思うほど「仲良し」ではありません。自分の家族、自分の生活を持てば、子どもの頃の関係と変わってしまうのは、当然なのでしょう。 いろいろな相続の現場を見てきて思うのは「えこひいき」は相続を揉めさせる大きな要因の一つだということ。しかも親は、無自覚なことが多いのです。 遺産分割を考える時は、「えこひいき」してる子がいないか考えてください。やむを得ない場合には、事前の話し合いや遺言書などで「えこひいき」されなかった側の子も、きちんとフォローしておくことをおすすめします。 ● 教訓 遺産分割を決めるときには、無意識に「えこひいき」している子がいないか、振り返ってみる *本記事は、板倉京著『子どもに絶対、迷惑をかけたくない人のための たった5日で相続対策』(ダイヤモンド社刊)から抜粋・編集して作成しています。
板倉 京