本物の“お洒落”とはどんな人?/ 塩沼亮潤大阿闍梨「くらしの塩かげん」
1300年間にわずか2人しか成し遂げた人がいない荒行「大峯千日回峰行(おおみねせんにちかいほうぎょう)」の満行者、塩沼亮潤(しおぬま・りょうじゅん)大阿闍梨(だいあじゃり)。最難関の命がけの荒行を経験し、修験道を極めた塩沼さんがいま切に感じるのは「日々の“あたりまえ”のことこそ難しい」ということ。 塩沼さんの最新刊『くらしの塩かげん』から、私たちの“あたりまえ”の暮らしにそっと光を灯す小さなヒントをお届けします。
清潔感は、最高のお洒落。
文/塩沼亮潤 どんな服を着るときでも、ひとつだけ大事にしていることがあります。 それは、清潔感です。 ちゃんとお風呂に入って、きちんと洗濯した服を着て暮らすというこだわりです。セーターや上着の場合には毎日同じものを着るのではなく、お休みさせながらローテーションで。 これは、服を大切に着ることにもつながっていて、長年着ている作務衣は、手入れしながら丁寧に35年も着続けているので、ボロボロなのですがむしろいい風合いになっています。 自分の雰囲気と生活に合った服を大切に着て、いつも清潔であることを心がける。そんな人のことを本物の「お洒落」と呼びたいものです。
塩沼亮潤(しおぬま・りょうじゅん)
1968(昭和43)年、宮城県⽣まれ。1987年奈良県吉野の金峯山寺で出家得度。1999年「⼤峯千⽇回峰⾏(おおみねせんにちかいほうぎょう)」の満⾏をはじめ、2000年には9⽇間の断⾷・断⽔・不眠・不臥の中、御真⾔を20万遍唱える「四無⾏(しむぎょう)」を、2006年には、100日間の五穀断ち・塩断ちの前⾏の後、8000枚の護摩を焚く「⼋千枚⼤護摩供(はっせんまいだいごまく)」を満⾏。同年故郷の仙台市秋保に福聚山 慈眼寺(ふくじゅさん じげんじ)を建立。「⼼の信仰」を国内外に伝えている。簡単なようで難しい日々の「あたりまえ」の大切さを綴った最新刊『くらしの塩かげん』(世界文化社刊)大好評発売中。
⼤峯千⽇回峰⾏(おおみねせんにちかいほうぎょう)とは
奈良県吉野山にある金峯山寺(きんぷせんじ)蔵王堂から、24km先の山上ヶ岳頂上にある大峯山寺(おおみねさんじ)本堂までの往復48km、標高差1355mの山道を毎日16時間かけて1000日間歩き続ける修行。毎年5月3日から9月3日までの4ヵ月間が行の期間と定められているため、満行には9年の歳月がかかる。毎日おにぎり2個と500mlの水、約4時間半の睡眠で臨む、 肉体的にも精神的にも極限まで追い込まれた状況下での命がけの荒行。塩沼さんは、1991年5月3日から4万8000kmを歩き、1999年9月3日に成満している。
撮影/善家宏明 上牧佑