芥川賞・滝口氏「語りの力を信じ書いた」、本谷氏「顔認証システムで着想」
第154回芥川賞・直木賞が19日夜、発表され、芥川賞は滝口悠生氏の「死んでいない者」と本谷有希子氏の「異類婚姻譚(いるいこんいんたん)」、直木賞は青山文平氏の「つまをめとらば」が受賞した。その後、都内のホテルで各氏が受賞の喜びを語った。 【中継録画】第154回 芥川賞・直木賞 受賞者3人が会見
本谷氏「アニメ声優もうやらない」
本谷氏は、4回目のノミネートでの受賞。今の気持ちを問われると、「頭が真っ白な状態」と回答した。 受賞作では、夫婦の顔が似てくるという設定を採用。「知人から、パソコンで写真の整理をした時、顔認証システムという機能を使ったところ、私と旦那の写真が一緒になってフォルダに入っていたと聞いたことがきっかけ。夫婦の顔が似てくるということに薄気味悪さを感じた時、書けるかもしれないと思いました」。 かつて、テレビアニメ「彼氏彼女の事情」の声優として出演。今後声優の仕事をしないのかと聞かれたところ、「19の時、あのアニメをオンエアで見た時、あまりの棒読みさ加減に絶望したので、もうないと思います」と笑った。 石川県生まれでは初めての芥川賞受賞。「石川県の方々には、昔から応援していただいています。今回の受賞を喜んでいただけるのなら嬉しいです」。
滝口氏「埼玉育ち関係ない」
滝口氏は2回目のノミネートで受賞。今回の受賞について、「大変光栄に思っています。今回の作品と、これまでの作品を読んでくださった読者の方に感謝を申し上げたいという気持ちです」と述べた。 今回の作品には、語りが優れているとの講評があったが、これについて、「今までは構造をカチッと組んでいたが、今回の作品ではそれを少し緩めて、語りの力を信じて書いてみようと考えました」などと説明した。 歩くことが好きだという。「小説の執筆前や、執筆している最中に、いろいろと考え直したり、停滞している考えを進める上で、歩くことが役立っています。今後も続けたいです」とした。 このほか、埼玉県で育ったことが創作活動に影響を与えたかを聞かれたが、「育った時間を過ごしたのは間違いありませんが、あまりないと思います」と答えて笑わせた。 (文・写真:具志堅浩二)