なぜセレッソ大阪から日本代表が大量に輩出されるのか?
同時進行でユース以下の育成組織の強化も図られた。時間と資金とを必要とする育成組織をどのようにして発展させていけばいいのか。稲本潤一や宮本恒靖らのW杯日本代表を輩出していた関西のライバル、ガンバ大阪の育成組織に追いつけ、追い越せを合言葉として2007年に設立されたのが、独自の育成サポートシステムである『ハナサカクラブ』だった。 サポーターから募った一口3000円の出資の全額を育成組織の費用補助に充てる基金で、初年度の150万円が2012年度では1400万円を超える規模にまで支援の輪が広がった。セレッソは特に海外遠征と食育に注力。十代から海外のサッカーを肌で感じさせることで目標を高く設定させ、管理栄養士によるバランスの取れた食事を提供していくことで体作りもサポートしてきた。 特に海外遠征を重要視した。初年度のU‐12フランス遠征を皮切りに、ユース以下のすべてのカテゴリーで毎年実施。今年も4月にU‐14がスペインでのトーナメント大会に参加し、現在はU‐18がドイツ及びオランダへ遠征中。ドイツでは昨年に続いてドルトムントのU‐18を破るなど、レベルの高さを示している。これらの費用は、すべて『ハナサカクラブ』への出資金でまかなわれている。 セレッソの育成組織の特徴は、海外遠征を含めて徹底した実戦主義の中で選手の心技体を磨いていくことにある。セレッソカップをはじめとする自主開催大会を、練習拠点の舞洲グラウンドなどで数多く開催するのもその一環だ。国内の各種大会への遠征も多い。 また、『ハナサカクラブ』での出資金をもとに、J‐GREEN堺に同時間帯で複数のグラウンドを確保。これまではU‐15の練習後の午後7時から開始されていたU‐18の練習を同5時開始とすることで、練習後に勉強に打ち込む時間を含めて、成長年代には欠かせない規則正しい生活を送れるようにした。 中学年代のジュニアユースからセレッソの育成組織で育ち、2009年にトップチームに昇格した22歳の山口は『ハナサカクラブ』のサポートを受けた第1期生。2008年1月にレアル・マドリッドのU‐18と対戦したヨーロッパ遠征をこう振り返る。 「あの経験がなければ(今は)なかったかもしれない。現に僕たちの後からも、下からいい選手がたくさん出てきている。その意味では、すごくいいことだと思う」 ひと学年下で、山口と同じくジュニアユースからセレッソ一筋の21歳の扇原も続く。 「向こうの選手は、同じ高校生なのにいい意味で大人びたプレーをしてくるし、日本人とはプレースピードも全然違った。そういうのを若い頃に体感できたのは、本当にいい刺激になりました」