なぜセレッソ大阪から日本代表が大量に輩出されるのか?
2010年に香川がブンデスリーガのドルトムントへ移籍し、ゴールを量産する大活躍を演じたことが、大きなエポックになった。セレッソを経由すればヨーロッパにいけるという気運が高まり、翌2011年に乾、2012年には清武が海を渡った。梶野部長は、こう語る。 「もちろん出て行かれたら困る部分もありますけどね(笑)。真司に始まって、ついこの前まで一緒にやっていた選手が今は世界で活躍している。こうした現状が目の前にあることで、後に続く選手たちの目標もはっきりしてくるんです」 戦力的には確かに痛手となるし、スター選手の移籍はサポーターたちに失望感を与えるだろう。しかし、主力の移籍に伴う移籍金を次世代の選手たちへ再投資していくことは育成型クラブの宿命であり、プロジェクトをスタートさせた2007年から描かれてきた青写真でもある。 実際、今シーズンからトップチームに昇格し、年代別の日本代表にも選出されている18歳のFW南野拓実がレギュラーを獲得し、眩い輝きを放ちつつある。セレッソの育成組織で育った選手がJリーグ、日本代表、そして世界へ活躍の場を移していくことを喜びとして共有できれば。これがセレッソの描く未来像でもある。梶野部長が続ける。 「選手の個人的な成長で言えば、やっと桜が咲き始めた段階ですね(笑)」 だからこそ、育成組織出身の柿谷や山口、扇原がA代表を果たしたことは、セレッソにとっても画期的な快挙となる。3度目のターニングポイントと言ってもいい。2007年から地道に取り組んできたことが、正しいと証明されたからだ。岡野雅夫社長が力を込める。 「ウチが大事しているのは何よりも育成。(柿谷)曜一朗や山口、南野といった選手が下から育ってきていることが、セレッソの財産なんです。曜一朗は勝手に育っていったんですけどね(笑)。育成組織の方針はトップチームと一緒。とにかく、攻めるサッカーだけをやらせる。それに特化すること。今のU‐18からも、じきにいきのいい選手が上がってきますから。ただ、現時点では前の選手しかトップチームに上がってきていない。守備の選手をどう育てるか。それが今後の課題だと思っています」 セレッソは17年後の2030年をめどに壮大な計画を進めている。トップチームに所属する日本人選手を全員育成組織出身にすることだ。3対0で勝利した10日の大宮アルディージャ戦を例にすれば、先発した11人のうち5人がすでにセレッソ大阪ユース出身で占められている。梶野部長が言う。 「関西の4クラブがみんな同じことをやるので、毎年のように選手が出てくるわけではないけど、そうした中でも今年は平均年齢が24歳台のチームを作ることができた。そうした年齢的なバランスも考えていきますけど、ウチはまだひとつもタイトルを獲得していないチームなので、咲き始めた桜が満開になって、タイトルを取れれば最高なんですけどね」 遅かれ早かれ、柿谷もヨーロッパの舞台へ旅立つことになるだろう。そして、柿谷の穴を埋め、未来の日本代表に名乗りをあげる金の卵たちも、着実に育成組織で育っている。 (文責・藤江直人/論スポ)