日本の涼景を求めて奥蓼科へ。標高2000㍍超の天然湖で苔むす原生林に囲まれた白駒池
真夏でも25度以下の奥蓼科へ
「真夏でも最高気温はほぼ25度以下。上着は必携です」。宿泊の予約の際、白駒池の畔に立つ白駒荘の主人、辰野廣茂(ひろしげ)さんにそう言われた。北八ヶ岳の原生林に囲まれる白駒池は、標高2000㍍以上にある天然湖としては日本最大だ。山小屋をベースに、自然散策と避暑を兼ねて、奥蓼科へドライブに出かけた。 八ヶ岳の東麓を北上し、八千穂高原と蓼科高原を結ぶ通称「メルヘン街道」(国道299号)のつづら折りを、麦草峠方面へと車を走らせる。峠の手前に駐車場(普通車600円)があり、白駒池へはここに車を停と めて徒歩で向かう。車を降りた途端、涼しさを実感した。 コメツガやシラビソ、トウヒなどの原生林の中に木道が整備され、白駒池までは10分ほど。白駒池は火山の噴火によって信濃川水系の大石川がせき止められてできた。約1.8㌔の遊歩道で一周できる。白駒荘に荷物を預け、散策をスタート。野鳥のさえずりと青々とした水をたたえる湖面を渡る風が心地いい。 湖の周囲の原生林は、地表から木々の根元や幹に至るまで緑の苔に覆われている。原生林と苔が作り出す光景は、ファンタジーの世界のようで神秘的だ。苔は茎と葉の有無や形状によって分類され、八ヶ岳の山中には519種もの苔が自生しているという。 【写真】北八ヶ岳ロープウェイの山頂展望デッキからのパノラマ
展望台からの眺望に息をのむ
湖畔を一周する手前、青苔荘(せいたいそう)の所から池を離れ、高見石の展望台へ。ここも木道が整備され、緩やかな坂を上る。ところが、約40分で高見石小屋に着くと、建物の横から展望台への道がない。積み重なった巨石の山を登るのだ。所どころに赤ペンキで書かれた丸印がルートのようだ。 なんとか岩山を登って頂上にたどり着き、息をのんだ。青空の下、北アルプス、蓼科山、浅間山などの山並みが遠望でき、眼下には原生林に囲まれた白駒池が見える。爽やかな風に吹かれながら、しばし雄大なパノラマに見入った。 山小屋の食事は早い。夕食は17時半、朝食は6時半から食事処で一斉に食べる。白駒荘は料理にも力を入れている。茅野市内の自家菜園で約30 種の野菜を栽培しており、鍋物やサラダなどの食材として提供する。「桃太郎ゴールド」という橙黄(とうおう)色の大玉のトマトが夏の名物だ。 19時半からは1日3組限定の「湖上星空ボート体験プラン」(1人3000円)も用意されている。ボートで白駒池に漕ぎ出し、満天の星を仰ぎ見る。天の川を観察し、宇宙の神秘に思いを馳せる貴重な体験だ。