橋本英郎が指摘する“お山の大将”問題。「サッカーが楽しい」と思える理想の育成環境とは?
自分に合った環境のために“再チャレンジ”を
理想はスペインなどのように上のレベルのクラブにチャレンジできるけど、そこで通用しなかったらもとのクラブや他の環境に移動できる環境をつくることです。 そのためには、クラブ間の移籍の流動性を高めることや、クラブと中体連、高体連の垣根をなくすことなどが必要です。文字で書くほど簡単なことではないのは重々承知していますが、選手のことだけを考えれば、「準備ができたらチャレンジできる環境」「準備ができていなかったらもう一度やり直す環境」を用意するのが一番いいに決まっています。 サッカー選手として成長するためには、できないこと、自分がいまできていることより少し上に目標を置くことも重要ですが、うまくいったときに「楽しい」と感じられるレベル感でプレーしなければ、サッカー自体が苦行になってしまいます。 子どもたちには、プレーしていて「楽しい」瞬間がある環境を選んでもらいたいですし、サポートする周囲の大人は、子どもたちが他者との比較ではなく過去の自分との比較で成長できたと実感できる経験を少しでも多く用意して、「サッカーが楽しい」と思える瞬間をつくってあげてほしいと思います。 (本記事はエクスナレッジ刊の書籍『1%の才能』より一部転載) <了>
[PROFILE] 橋本英郎(はしもと・ひでお) 1979年5月21日、大阪府生まれ。ガンバ大阪のアカデミーを経て、1998年にトップ昇格。練習生からプロ契約を勝ち取り、不動のボランチとしてJ1初制覇、アジア制覇などガンバ大阪の黄金期を支えた。その後、2012年にヴィッセル神戸、2015年にセレッソ大阪、2016年にAC 長野パルセイロ、2017年に東京ヴェルディ、2019年にFC今治に移籍してプレーし、2022年おこしやす京都ACに選手兼ヘッドコーチとして加入。現役選手としてプレーしながら、Jリーグ解説者、サッカースクール・チーム運営など幅広く活動。日本代表としては国際A マッチ・15試合に出場。2023年1月に引退を発表。25年間の現役生活に終止符を打った。
文=橋本英郎