若い頃の「タフな経験」は、未来に出合う不測の事態で「心のフタ」になる
放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2023年M-1決勝に輩出した・桝本壮志のコラム。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 【写真】令和ロマンに学ぶ、大人を「ホメとムチ(無知)」で手なずける技術【吉本NSCの人気授業】
今あなたはタフな環境にいますか? ー体育会系の上下関係がつらい ーブラックな仕事をさせられている ー何をしても、まっとうに評価されない こういった職場からは「すぐに逃げてもいい」が現代のセオリーですし、現に一つでも「不都合なこと」があれば、すぐに辞めてしまう若者が多い時代です。 ですが、間もなく50歳になり、(自覚はないですが)吉本NO.1講師と呼ばれている僕が、自分の「人格」の造形について振り返ってみると、今の僕をつくっているパーツの大部分は、つらく、歯がゆく、理不尽といったタフな経験で得たモノ。 そして、「タフ」な経験が、未来で待ち受ける“まさか”に対処する「フタ」にもなってきたと感じるんです。 では今週は、そのあたりを深掘りしていきましょう。
早年のタフな経験は「飛び級」と同じ
僕はよく同世代の仕事仲間に、「なんでド後輩に、いつも敬語なの?」と言われます。 10代の芸人、番組ADなど、誰であってもデフォルトは敬語。その理由は“一番ラクだから”だし、上下関係なんて“遠い昔にやり終えたゲーム”だからです。 15歳のとき、僕は甲子園で7度優勝の名門校に入り、毎日しごかれました。校内では3つの言葉(はい/いいえ/なんですか?)しか使えず、暴力は当たり前。神聖なグラウンドに水が溜まれば「お前の口で吸え」、アリがいたら「食え」と言われたこともありました。 そんなタフな経験をすると、もはや上下関係は、やり倒したRPGゲームくらい全体像やバグ(不具合、欠陥)が分かってくるので、“いい大人になったら振りかざすモノじゃない”と若年で気づくんです。 今、厳しい上下関係の渦中にいる皆さん。あなたのタフな日々は、視点を変えれば、より良いリーダーになるための思考を手に入れる先行体験。言わば「飛び級」のようなもの。そんな一側面もあると伝えておきたいです。