「肺NTM症」青森県内でも増加 衰弱進み亡くなるケースも… 長引くせきやたん、風邪に類似
「肺NTM症」という病気を聞いたことがあるだろうか。長引くせきやたんなど、一見風邪と似た症状を引き起こす病で、水回りや土の中など身近に潜む菌を吸い込むことで発症する。一般にはあまり知られていないが、近年患者数は全国的に増加傾向にある。専門家からは「青森県内でも患者が増えつつある」との指摘もあり、症状が長引く場合は早期に受診するよう呼びかけている。 NTMは、抗酸菌グループのうち、結核菌とハンセン病の原因となる「らい菌」以外の菌の総称で、非結核性抗酸菌という。肺NTM症は、水道水や浴室のシャワーヘッド、畑・庭の土などに潜む菌を含んだ水滴やほこりを吸い込むことで感染するとされ、中高年の痩せ型の女性や免疫を抑える治療を受けている人はかかりやすいといわれる。 主な症状はせきやたん、倦怠(けんたい)感のほか、息苦しさや体重減少など。血たんが出たり、微熱が続いたりすることもある。進行がゆっくりで症状を自覚しづらく、健康診断や別の病気の検査で感染が見つかる人も。症状が悪化すると衰弱が進み、呼吸不全で亡くなるケースもあるという。 結核予防会結核研究所の研究者らが大手医療検査会社の検体データを分析したところ、国内の肺NTM症の罹患(りかん)率(人口10万人当たり)は2017年で19.2人と推定。非結核性抗酸菌症研究協議会が調査した07年の5.7人からおよそ3.4倍に増加し、現在は結核を上回る患者数となっている。 また、厚生労働省の人口動態統計によると、22年に肺NTM症で死亡した人は1158人で、10年前と比べ約2倍に増加した。専門医以外での認知度の高まりや診断技術の向上も背景にあるとみられる。 県内でも同様の傾向にあるといい、弘前大学大学院医学研究科の田坂定智教授(呼吸器内科学講座)は「実感として患者数は青森県でも増えていて、ここ10年で倍ぐらいになっているのでは」と指摘する。 治療は複数の抗菌薬を組み合わせて行うのが通常だが、有効な薬は限られている上、少なくとも1年間は服薬を続ける必要があるという。田坂教授は「かかってしまった後でも、菌を吸い込むことを防ぐのも大事だと最近はいわれている。どれほど効果があるかは分からないが、患者さんができることとして、シャワーヘッドを交換したり、畑仕事をする時はマスクをしてもらっている」と語る。 肺NTM症はいまだ明らかでない部分が多く、現在も有効な治療法などの研究が進められている。田坂教授は「病気自体を知らない人がまだ多い。日常生活に菌が潜む身近な病と捉えてもいい」とし、「症状が2週間続くなど感染が疑われる場合は、早めに医療機関を受診してほしい」と呼びかけている。